【お薦めシングルレビュー 10】 速達 (ばんばひろふみ) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 皆さんは最近、手紙を書いたことありますか?私はと言えば、公私ともに「電子メールにおんぶにだっこ」状態という為体(ていたらく)ぶりで、まともに手紙を書く機会なんぞ、年賀ハガキくらいしかありゃしません。そんなこんなで私には、今日レビューで取り上げる作品に関して、あれやこれや書き散らす資格なんぞないような気もするんですが・・・。ま、気にせず行ってみましょうか

「速達」(ばんばひろふみ)
作詞:竜真知子
作曲:馬場章幸曲:瀬尾一三
[1982.11.21発売; オリコン最高位34位; 売り上げ枚数9.2万枚]
[歌手メジャー度★★★★; 作品メジャー度★★★; オススメ度★★★★

 ばんばひろふみと言えば、バンバン時代の「『いちご白書』をもう一度」(1975年、オリコン最高位1位、売り上げ枚数75.1万枚)、そしてソロで出した「Sachiko」1979年、オリコン最高位2位、売り上げ枚数75.1万枚 )が有名ですよね。どちらも「売れて当然」と納得できる逸品ですが、「それじゃ、その次に売れた曲は?」と問われたとき、きちんと答えられる人はあまりいないんじゃないでしょうか?「霧雨の朝突然に・・・」(バンバン、1976年)じゃないですよ。さだまさし作詞作曲の「縁切寺」バンバン、1976年)は、んーちょっと惜しい。それは4番目に売れた作品です(8.7万枚)。・・・答えは今日ご紹介する「速達」なのですねぇ。えっ?そんな曲知らないって?それじゃあちょうど良かった。この機会にぜひ覚えていって下さいよお客さん

 この作品は、発売当初からばんば氏のファンの間では名曲として結構話題になっていたようで、その後ラジオ番組や口コミを通じて徐々に評判が広がっていって、最終的には10万枚近くのロング&スマッシュヒットになりました。今のオリコンチャートは、ほとんど特定アーティストの人気投票の場と化してしまって、「速達」のように作品として出来がいい曲が、チャートをじわじわ上昇していくということがなくなって寂しい限りです 少なくとも、昭和時代の歌謡シーンには、じわじわヒットしてゆく曲の
チャート動向を追いかける楽しみというのがありましたもんねぇ・・・(遠い目)。

 さーて、気を取り直してとっとと作品紹介にいきましょうか。この「速達」は、娘と父親の心の動きを鮮やかに、そして昭和時代の一典型としての親子関係を見事に描いた作品なのですねー作品の主人公は、結婚したい恋人がいる年頃の女性とその父親。そしてストーリー展開の中で重要かつ象徴的な役割を担っているのが、二人の「手紙」のやりとりです。さっそく1番の詞をご覧いただきましょう。

♪ 「一度会ってほしい人がいます」と 父に手紙書いた あれは先週
  迷うわけじゃないの ただ少しだけ思いつめて 返事待つ日々
  親の元を離れ 暮らして二年 そしてめぐり逢った あなたのことを
  軽い気持ちじゃ言えなかった今まで 父はどんな風に思ったでしょう

♪ 急に無口になった父に はらはらしてる母が浮かぶ
  そうよあなたを愛してから いつかは来ると覚悟してた日
  ああ だけど私戻れない 何があっても戻れない 

 いかがでしょうか。娘の心(葛藤と決心)が複雑に交錯する様子が、手に取るように伝わってきませんか。そして、歌詞に登場する「父」みたいな親が、あなたの周囲にもきっといるんじゃないでしょうか。こういう「不器用オヤジ」ってのは、私の親の世代(現在70歳代以上)には割と多くいたタイプの人種なんですよね

 作曲の方は、「Sachiko」と同じ馬場章幸(ばんばひろふみのP.N.) です。両曲の「そっくり加減」といったら、兄弟とまでは言わなくても「いとこ同士」くらいには共通のDNAを持っているのではないかと思ってしまうほど
・・・ってな軽口はともかくとして、曲の方も、竜真知子センセによる見事な歌詞を十分に受けとめられるだけのコクと底力のある出来に仕上がっていて、自信を持ってお薦めできる作品なのですよ(wishy-washyオススメ度は★4つ)。

 この話の結末は2番で判明することになりますが、1番の歌詞同様に、「技あり」の絶妙な表現でストーリーが展開してゆくのは、さすが竜真知子センセのプロのお仕事・・・といったところでしょう
。このブログにはあえて2番の歌詞は載せませんので、YouTubeの動画をご覧になって、「必要最小限のフレーズで最大限の心象風景を描く」プロの技を、存分に味わって下さいね!