【お薦めシングルレビュー 7】 AQUARIUS (HIM) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 あるアーティストがオリジナルで発表した作品群が、他の多くのアーティストからカバーされまくってる・・・と聞けば、普通は、「その『あるアーティスト』ってのは、ものすごい知名度の大御所なんだろうな~」と思いますよね?(なぬ?思わないってそれじゃ話が続かなくなって困るんで、強引に「思う」ってことで話を進めます) だけど、物事には必ずと言っていいほど「例外」があるもので・・・。今日は、そんな悲劇(?)のアーティストが遺してくれた完成度の高い作品をご紹介しましょう。

「AQUARIUS」(HIM)
作詞:HIM、作曲:HIM
、編曲:Y.MIZUSHIMA
[1995.11.22発売; オリコン最高位-位; 売り上げ枚数-万枚]
[歌手メジャー度★; 作品メジャー度★; オススメ度★★★★]

 HIMは、4人の固定メンバーに何人かのアーティストが変則的に出入りするという、日本ではちょっと珍しい形態で活動するユニットでした。ちなみに「HIM」は、「Hiromasa Ijichi Melodies」の省略形で、音楽プロデューサーの伊秩弘将が主宰するプロジェクトユニットという意味。フィンランドのロックバンドとは関係ありませんこの実験的ユニットによってその実力が評価された伊秩弘将は、のちにSPEEDを手がけて大成功を収めることになります。

 この「AQUARIUS」は、HIMの3rdシングルに当たります。ちなみに、AQUARIUS=アクエリアスで、みずがめ座のことですね。HIMによる7枚のシングルの中では最もキャッチーでメロディアスな曲ですが、当時人気のあったtrfなどのヒット作を敢えて意識した音作りをしたことがかえって災いしてか、「HIMのシングルの中で最もオリジナリティに欠ける作品」と揶揄されることも・・・(私は決してそうは思わないのですが)。ちなみに、編曲のY.MIZUSHIMAは、SPEEDの曲のアレンジャーとして知られる水島康貴です。

 宣伝という観点からは、
TBS系TV「ランク王国」オープニングテーマという、なかなか強力なタイアップも付いてテレビから流れているのを耳にすることも多かったので、売れそうな要素は充分にあったはずなのに、セールス的には大惨敗という結果に終わりました(オリコン100位に入ったか入らなかった程度だったとの記憶が・・・)

 その後、
MAXがこの曲を「銀河の誓い」というタイトルでカバー。こちらはオリコン最高位5位となかなかのヒットとなりました。HIMの楽曲は、この他にも、5thシングルの「SHOOTING STAR」八反安未果が、アルバム曲「HEARTBREAK DIARY」deepsが、アルバム曲「INORI」新垣仁絵が、アルバム曲「MIZU-NO-RAKUEN」知念里奈「GOD BLESS THE WORLD」というタイトルで、それぞれ後にシングルとしてカバーしました。でも私に言わせれば、HIMのオリジナルを上回る出来に仕上がっていたカバーは残念ながら一つもなし
(ちなみに、HIMの姉妹ユニットHIM-eggによる「AS TIME GOES BY」をカバーしたhiro(島袋寛子)だけはまずまずのレベルに達していました)。これは「実験的プロジェクト」といいながら、HIMの歌唱や音作りが極めて高いレベルを誇っていて、カバーするアーティストがそのレベルに付いて行けなかったために起こった現象でしょう。にもかかわらず、出来の悪いカバーの方が次から次へとヒットを飛ばす状況は、当時HIMの実力を高く評価していた私にとって、「悔しい」以外のなにものでもありませんでした(←お前はHIMのメンバーか商売というのはつくづく難しいものですね・・・(←お前は伊秩弘将か