【お薦めシングルレビュー 5】 Love Me Tender (D-LOOP) | 歌謡曲(J-POP)のススメ

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音楽といっても数々あれど、歌謡曲ほど誰もが楽しめるジャンルは恐らく他にありません。このブログでは主に、歌謡曲最盛期と言われる70~80年代の作品紹介を通じて、その楽しさ・素晴らしさを少しでも伝えられればと思っています。リアルタイムで知らない若い世代の方もぜひ!

 70~80年代シングルレビューが続いたので、今回は90年代のお薦めシングルを取り上げることにしましょう。

「Love Me Tender」(D-LOOP)
作詞:真田カオル、作曲:
真田カオル、編曲:真田カオル
[1997.10.22発売; オリコン最高位20位; 売り上げ枚数13.9万枚]
[歌手メジャー度★★★; 作品メジャー度★★★; オススメ度★★★★★]

 90年代といえば、(第2次)バンドブームの到来によって、「歌謡曲」というカテゴリーがいよいよ風前の灯火となった時代です。また、80年代に隆盛を極めたアイドルブームも勢いを失い、アイドル性を兼ね備えた女性シンガーソングライターによるガールポップと呼ばれるジャンルが約10年ほどその跡を引き継ぐ形で支持されるようになります。先日の記事【独偏ベストテン Vol.4】で取り上げた近藤名奈山口由子亜波根綾乃あたりが、ちょうどこの「ガールポップ」のカテゴリーに入るでしょうね。

 今回ご紹介する
「Love Me Tenderは、D-LOOPというユニットによる作品です。ですから、厳密にはガールポップではないのですがこのユニットの魅力が「女性ヴォーカルMINAMIの声質に負うところ大」だったことを勘案すれば、ガールポップの延長線上にあるという位置付けで特に問題ないでしょう(ELTFavorite Blueなども同じですね)。

 D-LOOPにとって2作目のシングルに当たる「Love Me Tenderは、MINAMIの切ない声質とメロディアスなサウンドが魅力の超名曲。決して「歌謡曲」のカテゴリーでは語られない曲であるにも関わらず、時代や世代を超えて多くの人に(もちろん歌謡曲ファンにも)受け入れられるパワーを持った作品なのです。

 ヴォーカルのMINAMIさんは、正直言って「歌がうまい」と手放しで言うのは憚られるのですがマイナー調の切ない曲を歌わせるとちょっと右に出る者がいない、貴重な声質の持ち主でした。この「Love me tender」などは、彼女の哀愁漂うヴォーカルとサウンドがこれ以上ないくらい相性良く決まっていて、まさに彼女のために書かれた作品と言っても言い過ぎではありません。

 
作曲真田カオルは、東京JAPのヴォーカルとして、1984年に「摩天楼ブルース」をヒットさせているので、ご存知の方も多いでしょう。ちなみに、真田カオル本人も、ほぼ同時期にこの曲をセルフカバーしてシングルリリースしていますが、私は断然D-LOOP版の方を推しますね。また、D-LOOPのメンバー葉山拓亮は、1st&3rdシングルのコンポーザーですが、「Love Me Tender」と比べるとパットしません。知念里奈や観月ありさなど、アイドル系女性ボーカリストへの提供曲の方が評価できるコンポーザーです。

 D-LOOPは、デビュー翌年に3枚目のシングルをリリース後に、メンバーの脱退などのため活動休止。その後、2004年に突然再始動を発表しています。再始動としてリリースされたマキシシングル「Destination」とアルバム「grace mode」では、装いも新たに進化した重厚なサウンドを携えた堂々の再起動っぷりが、私を大いに喜ばせたものです。しかし、その後再び作品がリリースされることはありませんでした。

 そして、私ですら
D-LOOPのことを忘れかけていた2010年4月、ヴォーカルのMINAMIが「医師処方の薬の服用ミス」によって急逝した(当時のニュース記事による)というニュースを耳にすることになろうとは・・・

 
日本のポップス界はまた一人、惜しいヴォーカルを失ってしまいました
。心よりMINAMIさんのご冥福をお祈りします。本当に素晴らしい作品をどうもありがとう。