ー前回までのあらすじ
敵はスタンド使い。
一週間放置してしまえば、古いミクの記憶は永遠に消し去られてしまう。
そこまで突き止めた坂間京子は、7日目にしてミクと接触。
しかしミクの浮かない顔はそのままだった。
京子「私はどちらでも構わない。あなたとは友達というわけでもないし、このままで困るわけじゃない。」
京子「どうする?」
ミク「じゃあ…」
ミク「このままでいい。」
京子「……!」
京子「ハァ…」
京子「これはちょっと予想外。お尻を引っ叩けば動くと思ったのにね。」
京子「いい?初音ミク…」
京子「あたしはアンタを助けたい。」
ミク「!?」
ミク「どっちよハッキリしないわね。」
京子「確かにあなたと私は無関係。だけどこのスタンド攻撃には関係がある。」
京子「私には、友達の記憶を操って傷つけた過去がある。」
ミク「!」
京子「だから『責任』がある。この町がまたそんな人たちに侵されようとしているのなら、必ず止める責任が。」
ミク「責任…」
京子「そして何より、関係なかろうが千歌たちの頭をいじくりまわした輩は許さない。あたしが絶対にスタンド使いを倒す。」
ミク「なら、違う仲間を連れて敵を倒せばいいじゃん。露伴とか。」
京子「関係ない人を巻き込むのはナンセンス。」
京子「でもアナタは違う…!」
京子「当事者なんだから!」
ミク「っ!」
京子「そんな顔で戦われても邪魔になるから手伝えとは言わない。」
京子「でもこれから私が『何を』助けるかは知っておきたい…!どんな覚悟で戦わない方を選んだのか『納得』できなければ前に進めない!」
ミク「…いいわよ、じゃあ納得させてあげる。あたしがいかに異端なミクかってことを。」
京子「異端…」
ー数年前ー
知ってるとは思うけど、初音ミクという存在はそれを求める人たちによって、ある日突然この世へ呼び出される。
そして初音ミクは、他のミクと同じように、この世界で癒しを求める人たちのために奉仕を始める。
でもあたしは違った。
あろうことか、生み出されたときから歌が嫌いだったの。
歌で人々を幸せにするミクには致命的な欠陥だった。
ミクが綺麗に整えられた電化製品だとすれば、あたしは何かの欠陥で本来返品されるべきだったガラクタよ。
仕方がないから、自分に合う特性を探して世界を彷徨った。
けっこう色々やったよ。
バイトとか、モデルとか、役者とか。
でも全て楽しくなかった。
他のミクはあんなに幸せそうに歌って、あんなに多くの人を幸せにできるのに。
そこからはもうヤケよね。
気まぐれで喧嘩師とかいうワケわかんないキャラを名乗り始めて、すぐにこの町に行き着いた。
そして気づけばやられキャラよ。
ホントはね、ちょっとそういうの楽しかったりするんだけど…ミク本来の役割とは違う。
他人を幸福にしない。都合のいい時だけ呼び出される、ソバの出前みたいなもの。
だからみんながあたしを忘れた時も、別に何とも思わなかった。
結局こんなものだよね、って。
むしろ、あたしの代わりに入ったあのミクが大勢を幸せに出来るのなら、願ったり叶ったりよ。
あたしの存在は新しいミクに明け渡すためにあったんだって。そう思うと、誇らしい気さえする。
ミク「だからあたしにとって、戦わない選択は限りなく正しい。どう、分かってくれた?あたしがいかに異端なミクか。」
京子「………」
京子「そういうのはいいわ。」
ミク「どういう意味よ。」
京子「あたしが聞きたいのはアナタ本人がどうしたいかって事。」
京子「悪いけどあたしにとってこの町のミクはアンタだけ。関係ないとは言ったけど、友達の友達だし。正直言って、あの新しいミクは得体が知れなさ過ぎて気持ち悪いわ。そんなミクに取って代わられるのは御免被る。」
ミク「友達なんかじゃない!!」
京子「!」
ミク「友達なんかじゃない…!あたしはただの都合のいいサンドバッグの初音ミクだから!」
京子「それでも!」
京子「思い出を失ってもいいの!?」
京子「他のミクなんて関係ない!ちょっとは楽しかったっていう、あなた自身の思い出が無くなるのよ!?そんな人生あっていいわけない!あたしは一人の人間としてあなたに話をしている!」
ミク「分からないよ!!」
ミク「分からないっ…!もう何を信じて生きていけばいいのか…私には分からないよぉぉっ…!」
京子「………」
京子「分かった。もう、これ以上は言わない。」
ミク「うっ…うぅっ、うっ…」
京子「じゃあね。私は急いで敵の本体を割り出さなきゃいけないから。」
ザッ
?「何やら騒がしいから来てみれば…」
京子「?」
チャッ!
ネビュラ「新しいミクがどうのこうのと…」
京子「!?」
京子(こいつは確か、ネビュラとかいう賞金稼ぎ…!)
ネビュラ「お前たち、私の記憶喪失について何か知っているな?」
京子「!!」
ミク「!?」
ネビュラ「吐かなければ撃つ。」
京子(記憶喪失に気づいている…!?)
その4へ続く