2024年1月 鑑賞映画ひとことレビュー | (ほぼ)月一更新(予定)鑑賞映画ひとことレビュー

(ほぼ)月一更新(予定)鑑賞映画ひとことレビュー

月一で初鑑賞映画の感想を書いてます。
あくまで個人の感想です。立派な考察・評論は出来ませんのでご容赦下さい。

2024年1月 鑑賞映画ひとことレビュー

 

1月の鑑賞本数は24本。今回より更なる高みを目指して映画.comさんにリンクします。

 

「エクスペンダブルズ ニューブラッド」

栄えある今年の映画始めがコレ。っていう事でなんだか先行き不安な感じになってしまったくらい、どうにもこうにもなダメ映画でした。今までのシリーズにあった、アクションスター大集合のお祭り感も無く、またいい大人たちのバカ騒ぎやいちゃいちゃ感も無いという、というかそれが無くてなんのエクスペンダブルズかという事なんですが、正直普通のアクション映画としての出来も悪いという、本当にどうして作ってしまったの?な悲しさと切なさが胸にしみました…

 今回はステイサムへの王位継承という位置づけなストーリー。スタローンがまさか!という驚きからのリベンジマッチと行きたいところなのに、何故かお色気ムンムンすぎる(セクハラ)嫁が主導権を握るというなんともよくわからない展開。邪魔者扱いされてからの東洋の神秘溢れるトニー・ジャー先生の登場、そしてニコさん率いる悪の軍団との壮絶バトルからの本当の敵&まさかの驚き…なんて、まさかと言いながらまあ王道中の王道なお話なのですが、これがまあ上手くない。演出が下手すぎて(というかリズム悪すぎ&アクションの見せ方の下手さ加減がひどい)ので、一向に盛り上がらないわ、ジャーさんとニコさんの扱いはひどいわ(差別意識まで感じてしまいましたよ)、ラスボスはチンケだわ、CGは安っぽいわ、グロは甘いはで、もうとにかく色々ダメ。久しぶりにダメな映画ていうのを映画館で観てしまいました(しかもDolbyーシネマ泣)。まあステイサム(このシリーズのステイサムはほんとかわいい)とスタローンがいるだけで良いという気もするし、ミーガン・フォックス嬢のパツンパツンT-シャツ姿を拝めただけで良しとするべきかもですが、これでこのシリーズがオーラスかと思うとやっぱり納得できないわけで。というわけでスタローンにはその権力と人脈を駆使しまくって、最後に「オールドブラッド」として古今東西現役のアクションスターを集めまくった4尺玉を打ち上げてほしいです。

【65】

 

「ラスト・デイズ(2013)」

 めちゃくちゃ真面目に作っているのだけはわかるので、そこは好感度大。

 

「シャクラ」

 宇宙最強の男・ドニーさん待望の超絶アクション武侠大作。俺様ドニーを十二分に堪能させていただきました。

 宋代の中国を舞台に、人望と漢気あふれまくるドニーさんの、裏切りから始まる壮大な自分探しの大冒険を描いたロマンあふれる至極の一品。かの金庸原作とあって、物語も二転三転。サスペンスやミステリ、そしてロマンスもてんこ盛りエンタメ活劇として非常に楽しい1本です。

 とにかくアクションがもう最高で、ワイヤーを使いまくりの重力無視なやわらかく滑らかな動きは、やっぱり香港映画が一番。ドニーさん含めアクション俳優たちのレベルが半端ないし(脇の方まで手抜き無し)、しっかり見せ場を見せ場としてきっちり見得を切るそのカッコよさはさすがの谷垣さん。あまりに超絶スピードすぎて瞬き厳禁なところが困ったもんですが、全員魁男塾並みの濃厚さを持ったキャラたちとの壮絶バトルはやっぱり香港映画ならではの濃厚さ。可憐すぎるヒロインとのギャップもまた最高だし、義理の妹の女戦士さんもまたキャラ立ちがお見事。今回についてはリアルファイトというよりもファンタジーよりの格闘だけれど(かめはめ波打ちまくり笑)、それでもやっぱり見せ方を知っているスタッフ・キャストの職人芸を劇場で堪能できるのが本当にありがたかったです。

 まあ正直ドニーさんの俺様っぷりが鼻につくところもあったりしますが、それはいつものご愛敬。それも含めての宇宙最強なわけですのでそれを言うのは野暮てもんでしょう。あと個人的に漢字の名前や地名がどうしても覚えづらく(字幕がなんであんなに大きかったのでしょう)、香港映画は初心者に近いので役者さんたちの顔での判別がつきづらかったこともあって今一つ世界観が理解できなかったのが個人的に無念でありました。

 とにかく中盤のクライマックス、仲間だった男達との決別の盃からの超絶アクションだけで全男子感涙の必須科目である事だけは声を大にして言いたいです。

【75】

 

「ブルービートル」

 DC再編のあおりをもろに喰らったまさかの未公開ヒーロー映画。メキシカンなテイストは目新しいけれど、正直出来は今一つ。可も不可もないこれと言って特徴のない映画でした。ブルービートルがあんまカッコよくない…

【65】

 

「ファースト・カウ」

 非常に評価が高いので、個人的にはあんまり好みではないのだけれど鑑賞した1本。いやーとにかく完成度がすさまじく高い圧巻の映像詩でした。

 ファーストショットの決まりに決まった構図からラストに至るまでの構成や流れが完璧。残酷な世界の中で、様々な意味でアウトローである二人の男達が見せる友情の高潔さを、シンプルかつ繊細なタッチで描いております。厳しく汚れた(ように見える)現実の中であくまでも生きようともがく二人の、ラストの達観ともいえる帰結が、そのまま現代につながる円環の物語は、監督の優しい目線とは裏腹に(特に現代においては)ずっしりと響いてきます。とにかく隅々まで丁寧かつ考え抜かれた演出で貫かれた映画なので、スローなテンポにゆっくりと浸りこむのが良。そういう意味で昨今のアップテンポな映画とは一線を画しているので人によっては観方がわからないで苦しむかとも思いますが、登場人物の生き様を観察・考察し、移入してこそのドラマという意味においては傑作であると思います。鑑賞後のなんともいえない幸福感と無常観の交じり合いが非常に心地よく、また恐ろしい映画です。

【70】

 

「新プレデター 最強ハンター襲来」

 新プレデターって続編でもなんでもないのにこのタイトルって大丈夫なのかしらなんて余計な事で心配してしまいました。

あ、映画はザ・C級なヘタレ映画です。

【50】

 

□「デッドゾーン 殲滅領域」

(データなし)

 飽和状態のゾンビものの中でも中の下。もう3歩。

【50】

 

「もっと遠くへ行こう。(Amazonプライムオリジナル映画)」

 うーん…SFとしては中途半端だし、ドラマとしても二人がひたすらうだうだ、めそめそしてるだけで不快というどうにも微妙な映画。どっちかに振り切ればよかったのにとは思いました。

【65】

 

「アクアマン 失われた王国」

 こちらもDC再編の煽りを喰らって悲しい感じな扱いになってしまいましたが、映画自体は血湧き肉躍る大冒険活劇としてしっかり楽しめる良心作でした。

 実際結構な期待作だったのに、アンバー・ハードやらコロナやらでミソをつけられ、しかもガンに引っ掻き回されるという呪われた映画になってしまったのに、監督以下現場の製作陣や役者陣(アンバー除く)は、そんな中でもいいものを観せよう、楽しんでもらおうという気概に溢れていたのがなんとも頼もしい。

 物語は前作の続き。前作で王となったモモアマンが、怒涛のごとく押し寄せる世界規模の内憂外患(子育て含む)に、腕っぷしとユーモアと勢いで立ち向かうエンタメ全振りの王道ストーリー。個人的推しのパトリック・ウィルソンの大活躍も微笑ましいし、妙な色気ムンムンのアンバー・ハードとニコール・キッドマン(年齢不詳感が半端ないです)もサービス満点。バカでかすぎるスケールと、圧倒的な映像へのこだわりの意味の無さ、そしてバックボーンを持つ魅力的な悪党と、絶対的悪との予定調和な絡み。これぞハリウッド映画!というおおらかさ(裏を返せばいい加減さとテキトーさ)がなんとも心地よい映画となっております。まあこれもひとえにモモアマンの豪快キャラが素晴らしいのが全てなんだけれど、だからこそリキャストするのが本当にもったいないし、悪手だと思うのですが、ナーズなガンはきっと嫌いなんだろうなあ。なんだかどんどん私物化されて行っている気がするDCの行く末に不安しかないのですが(とはいえ観てみない事には何にも言えません)…

【70】

 

「クー!キン・ザ・ザ」

 「不思議惑星キン・ザ・ザ」のアニメ版スピンオフ。実写版もそうだけれど、こちらもレトロ感あふれる世界観は最高。まあ世界観は最高ですが、それ以上でもそれ以下でもないのが苦しいところです。

【60】

 

「コンクリート・ユートピア」

 未曾有の大災害で崩壊したソウルで、唯一崩壊を免れたマンションに集まった生存者たちを描いたパニック・スリラー。

 まずオープニングの大災害の描写が強烈。突然の地盤隆起からの怒涛の大破壊は、それだけで2000円分の価値がある大満足なカタルシス。その破壊され尽くし荒廃しまくった世界で、ただ運が良かっただけのマンションで生き残りをかけたサバイバルが始まるわけですが、展開自体は結構オーソドックス。最初は人道的な人々が、自分に危険が及ぶにつれ他人を排除、攻撃して身を守ろうとするのですが、この映画とにかく出てくる人物が絶妙に嫌な奴やダメな奴ばかり。そんな(ありていに言えば)人間らしい人々の、エロ・グロ・バイオレンス・ユーモア・恋愛・社会問題…などありとあらゆる要素をごった煮にして長時間煮込んだような濃密なドラマは非常に鬱であると同時に魅力的。この手の映画の基本である観客目線の主人公2人(若夫婦ですね)の一方が感化され、一方が反抗していく展開は非常に王道であるが故にストレートに心に響きます。正直盛り込み過ぎの感じもあり、あまりの救いの無さと暗さに辟易するところもありますが、クライマックスからラストにかけてのカオスな展開の中で、社会問題も定義しつつの悲しさは、なるほど現在の韓国映画の力量を思い知らされる熱に満ちたものでした。

公開のタイミングがあまりに悪かった(完全に不可抗力)のが切ないですが、徐々に狂気に飲み込まれていくうだつの上がらな男

を非常に正確に演じたイ・ビョンホンをはじめ、それぞれに役割を的確に演じる役者たちの力量も含め、非常に見ごたえのある映画でした。

【75】

 

「ビリーバーズ(2022)」

 きちんとザ・山本直樹な映画になっていて好感度は高め。かなり観るものを選ぶ映画ですが、絶妙にいろいろな臭さを避けるセンスがお見事でした。

【70】

 

「ハウス・オブ・インフェルノ」

 ジャケット画像で騙されました。

【50】

 

□「幽霊報道」

(データなし)

 真面目にやりましょう。

【40】

 

「いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち」

 7人から10人に増えた続編。普通にコメディとして面白いです。あくまで普通に。

【60】

 

「VESPER ヴェスパー」

 予告編でかなり惹かれた終末系SFファンタジー。

ビジュアル的には非常に魅力的。植物が進化した世界の中で、城塞の中に閉じこもり享楽を謳歌する支配階級と、ドームからはじかれ細々と生きる底辺の人々という対比はありきたりでよくあるお話だけれど、とにかく徹底的にこだわったであろう世界観とディティールが素晴らしく、その世界に浸るだけで満足できる1本ではあります。この手の映画はディティールがすべてなので、そういう意味でもこの全振りは正解。有機体のドローンだったりパソコンだったりはやっぱりガジェット好きにはたまらないものがありました。まあ植物系についてはもう少し色々出来たしスケール感の小ささが勿体ないような気もしましたがそれえは高望み。(きっと)低予算でここまでできれば十分満足でした。

 とはいえやはり物語は今一つ。残忍な叔父(この方ほんとに上手)が非常に魅力的だけれど、圧倒的な世界観を今一ついかせなかった(というかほぼ関係無かった)物語は要検討。ネタバレなのであれですが、支配階級の掘り下げや放浪者、そしてシミュラ…の意味など総じて全て不足気味なのが非常にもったいない感じではあります。

 リズムとテンポがいまひとつで世界観に乗れない方には結構な苦痛かと思うこの映画ですが、前記した点も経験不足からなので、これからブレイクしそうな気配は濃厚な監督たちかとは思います。とりあえずは追っかけます。

【70】

 

「死亡特急」

 ドイツ製B級アクション映画。ゆるゆるだけどアクションはそれなり。

【40】

 

「悪魔のシスター」

 実に50年ぶりのデジタルマスターリバイバル。

 昨今とんと声を聴かないデ・パルマ師匠(御年83歳…)ですが、個人的に愛すべき監督ベスト5に名を連ねる巨匠なので、もちろんこの映画も観てますし(ビデオですが笑)覚えてました。が、今回改めて劇場鑑賞。印象がかなり変わりました。以前はこうトリッキーなヒッチコック風サスペンスな印象だったのですが、今回見直して感じたのはかなりガチで陰惨なサイコホラーだという事。ストーリー展開的には覗きやらアバンチュールやらこの頃の師匠の他愛無い倫理観を幼稚に挑発するような十八番てんこ盛りでスタートするのですが、それからストーリーがどんどん不穏な方向に進むにつれ、人間の根本の倫理観が崩壊し、そして自我までもが崩壊していく様を遠慮なしに超絶テクニックで描いてく様は、さすが変態で名を売った師匠の真骨頂。マーゴット・ロビーの危うすぎる魅力に、盟友のウィリアム・(ファントム)・フィンレイの怪演が相まって、異常すぎる恋愛ドラマが至高のサイコスリラーへと昇華していく展開から、救いゼロのラストの凶悪な鬱オチはさすがの師匠。性格最悪で後輩から嫌われているのもうなずける悪辣さです。

 もちろん古い映画なので、今観ると色々おかしな点や技術的に未熟なところもあったりするのですが、だからこそのパワーと雰囲気がこの映画には満ち溢れています。リメイクでは絶対出ない、そして師匠以外では絶対出せないこの軽薄さと凶悪さのミックス。堪能しました。

【75】

 

「カラオケ行こ!」

  原作好きで映画は興味なかったのですが、やたら評判が良いのでとりあえずという感じで鑑賞。いやなるほど、高評価も納得のクスリと笑ってじわっと泣ける、非常に味のある良作となっておりました。

 ひと癖も二癖もあるヤクザと思春期真っ只中(の割にどこが冷めたような天然のような)中学生の、カラオケを通しての友情と絆の物語…なんてハチャメチャな設定というかイロモノでしかありえないお話なのに、原作の味である、バカバカしくも笑えて泣けるという、実に考えに考え抜かれたセリフとシーンが醸し出す飄々とした空気感が映画で見事に再現。付け加えられたシーンや設定(後輩の熱すぎる合唱部員は最高でした)も本筋から離れる事無く、あくまで原作を補填するように機能しているのがさすが売れっ子脚本家と言ったところ(とはいえ映画観るだけ部については少し余計かなとは感じましたが)。山下敦弘監督の安定した演出もあり、癖のありまくる物語が非常に観やすく、こんな狂気のお話が普通のドラマになっているのがなんとも面白い。

 綾野剛は原作とはだいぶイメージが違ったのですが(個人的には北村一輝でした)、狂児というチャラけているようで、どこか死の匂いを放つ危険な男という難しい役柄を、飄々とこなしているのはさすが。時たま見せる間の恐ろしさがなんとも言えない緊張感です。聡実君はほんとイメージピッタリでびっくり。下手したら相当嫌な奴な聡実君を、ほぼ原作通りなのにこんなに愛おしく感じる斎藤潤君はキャスティングの大勝利。合唱部の仲間やヤクザの親分まで脇役が総じてイメージ通りなのがほんとに楽しかったです。

 まあ大傑作!というほどの大感動では無いですが、ここまで(クスリと)笑えて(クスリと)泣ける映画は貴重という事を再認識させていただきました。とりあえず「紅」を見直しました。

【80】

 

「終わらない週末(NETFLIXオリジナル映画)」

 超豪華キャストがおくる世界崩壊を描いた終末パニックスリラー。非常に魅力的なイメージが多々あって、お話もスリルとサスペンスと驚きに満ちた快作。登場人物が全員嫌な奴っていうところに賛否両論はあるかと思うのですが、やっぱりイーサン・ホーク出演B級映画(これはかなりハイバジェットですが)に外れ無しの法則は正しかったです。ちょっとオチが微妙ではありましたが、アイロニーに満ちていてこれはこれでOKかと。

【75】

 

「見えざる手のある風景(amazonプライムオリジナル映画)」

 なんだかラファティあたりが書いてそうなイヤーな感じの近未来SFコメディ。圧倒的テクノロジーを持ったエイリアンに支配された地球の状況を一人の男子高校生を通じて、強烈なアイロニーと風刺たっぷりに描いた映画なのですが、とにかうエイリアンが秀逸。ナメクジとカニが合体したような化け物みたいな外観に、中身が完全に成金セレブで、しかも支配欲丸出しという、どこかの国の政治家のようなエイリアンたち。そんな奴らに迎合するもの、反抗するもの、泣く泣く従うものなど、それぞれの環境から選択していく人々が妙にりあるでやるせない。基本的にはコメディなんだけれど、それぞれのエピソードや人々の感情の流れが非常に恐ろしい侵略物で、知能指数が結構高い映画であります。主人公があまりに可哀そすぎて泣けてきます。怪作。

【75】

 

「ブレイキング・ニュース」

 巨匠ジョニー・トー、2004年製作の、すこぶる快調なアクションエンタテインメント。特集上映「男の絆セレクション」で劇場鑑賞。いやーすごい。面白い。大興奮。それ以上言う事はないのですが。

 トーさん、ほんとに上手い。アクションがその場限りにならないつなぎの上手さ、観たいものをきっちり魅せてくれる構図の巧みさ、流れを切らない物語の持って行き方、登場人物の感情の流れをセリフに頼らず目線や動きで見せる演出の匠さ。もはや全てが芸術。冒頭の7分間長回し銃撃戦からテンション上がりっぱなしの89分(この内容で89分!)。お話には結構無理があるし、辻褄があってない所も冷静に考えれば多々あるのですが、異様なテンポと語り口の巧みさで押し切られてしまう、至極の時間でした。常連俳優さんたちの息ぴったりな名演もさすがの一言です。

ちなみに今回の「男の絆セレクション」では「エレクション」「エグザイル/絆」を劇場鑑賞(「エレクション 死の報復」な泣く泣く断念…)。どれもこれも男達の熱くも切ない様々な”絆”をカッコよすぎる行動(セリフでは無く。ここ大事)で描き切った至極の傑作でした。

【75】

 

「哀れなるものたち」

 個人的には作品によって好き嫌いが激しく出てしまうヨルゴス・ランティモス監督のやたら評価の高い変態芸術作品。

なんというかものすごい高級で豪華な材料で超高級三ツ星レストランのシェフが大勢で作った豚骨ラーメンみたいな映画でした(誉め言葉です)。実際、想像をはるかに超えたお下劣さと即物さ(誉め言葉です)で、賞レースでの高評価で見に来たカップルなんかはものすごく気まずくなるんだろうなあなんて余計なお世話感がありました。

 成熟した身体に赤子の魂というアンバランスである意味純真無垢な女性が、様々な経験を積み(主に肉体の方向関係で)、女性として、人間として成長していくという、ある意味非常に王道な成長物語ではあるのですが、そのシチュエーションというか展開というか異様というか異常過ぎというか常識からことごとく外れたものばかり。まあよくもこんな変な事を考えるもんだと感心しきりなんですが、お相手の野郎共がみんな昔ながらの男の価値観で登場する事で却って浮きまくっているのがなんとも痛快。しかもそんな悪趣味な奇想をとんでも無く腕やセンスのあるプロフェッショナル達がその才能をいかんなく発揮しまくっているものだから面白く無いわけが無い。そんな女性主人公に絡む登場人物達が哀れなるものというよりは情けないものというか良くも悪くも男と女というか人間というか。総いうところがものすごく上手いというか恐ろしい。メタファーと隠喩に溢れた知的な美術や構造の中で語られるとことんゲスで純真な物語。唯一無二の世界を持つ監督が作った唯一無二の変態映画。

【75】

 

「白日青春 生きてこそ」

 香港映画界の至宝、アンソニー・ウォン主演のヒューマンドラマ。パキスタンから香港へやって来た難民の少年と1970年代に中国から密航してきたタクシードライバーとの交流を描く。

 撮り方によってはお涙頂戴の一大感動巨編になりそうなお話なんですが、この映画の場合、そんな単純な構図ではありません。

交通事故で父親を失い、ギャングの仲間となってから、転がり落ちるように深みにはまっていく少年と、その転落の原因である事を言えないまま、過去の過ちを清算しようと少年を助けようとする初老の男の交流を描きつつ、決して美談にしない、その厳しい目線がなんとも誠実。現在の香港の様々な社会問題を絡めつつ、父を求める少年と、息子を理解しようとする初老の男の、それぞれの立場での苦しみや悲しみが二人の名演によって非常に痛切に迫ります。乱暴で無知で自分勝手、善意が全て裏目に出るどうしようもない男を、従来のアクの強さを抑え込まずに利用し、ユーモアを交えた名演で感情移入出来るキャラに仕立て上げたアンソニー・ウォンさんの名演はもとより、父親という庇護を無くし、どうしようもない窮状から逃げ出せずもがく少年を瑞々しくもリアルに演じたサハル・ザマン少年のシンプルさが素晴らしかったです。

 ラストのほろ苦くもリアルな決断も含め、重いテーマのドラマを、ファンタジーに逃げずにエンタメに昇華させた監督の手腕はお見事でした。

【70】

 

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