明後日から、しばらくいなくなる

今日はギリギリまで作業して

事務所のカードキーを返して

ちょっと、感傷的にエントランスを抜ける


「今日で終わりですか」

昨日と同じポロシャツなの?

「お疲れ様」

展覧会、うまくいきますように


m-floの視聴が空くのを待って、

一回だけ”プラネタリウム”を聞く

藤原基央という人は


藤原基央という人は何といったらいいか、

自分が男で、音楽の才能があったら

ああなっていたかった 

もしくはなっていたかもしれない?

いつも無視できない人


同じような恋をしているのかもしれない


m-floは

「色んな人に浮気してますねえ」

いいじゃない でも

久々のRISAに、鼻血が出そう


旅する前の心境

始まらない、終わらない、落ち着かない


ゆるぎない

めまぐるしい毎日

気づくと、またこの季節になっている


むっとする空気や、じりじりとうなじを焼く日差し

塩素のにおい、虫の声、

しっとりした夜更け、まぶしい日の出時

いとおしく感じる


視覚が、聴覚が、嗅覚が呼びかける

「ほら、またきてるよ」と


体の中に積層する夏が、内からも呼びかける

「ほら、またきてるよ」と


そうだね、あの時も

それからあの時も、夏だった


どうってことのないTシャツを脱ぎ着するように

通り抜けていく毎日が

いつか”殿堂入り”していくんだということを

何年もかけて、わかった


緊張してしまうんだよ

感覚が凝縮されるこの季節を

どんな振りして生きようかって

 勢いよく押すと、重いドアも裏側の壁にぶつかって跳ね返らんばかりに、大きく開いた。スニーカーの底のぬるっとした感触を懐かしく思いながら、無人のまま閉まりかけていたエレベータに滑り込む。扉がもう一度開くと、エントランスまで敷き詰められたモスグリーンのカーペットを数歩で蹴って、私は不発のままくすぶっていたライフルが不意に弾き出した玉みたいに、初夏の空気の中へと飛び降りた。


 同じベッドの上で数日間眠り続けたせいで、しんと滞っていた血潮が今、大嵐の翌日の濁流並に激しく駆け巡り、沸騰し、上下の歯茎の中に説明しがたい不快感を巻き起こして、手入れの行き届いていない親不知は今にも浮き上がりそうで、私は駅までの最短コースを1km3分半の駿足で進みながら、ずっと顎を強く噛みしめていた。


 道路工事の現場にさしかかる。茶髪にサングラスの女性交通整理員が、いぶかしげに見てる。"にこっ"と"にやっ"の中間くらいで笑って、軽く受け流す。こんな平日の昼下がりに、国道沿いを全速力で走っていれば、そんな風に見られることもある。濁った水路の淀みに、小さな鳥が浮かんでいる。名前もない夏草が、斜面一杯に揺れている。日は傾きかけ、人々は自転車か相応の乗り物を駆って、ずるずるとアスファルトを嘗めていく。ジオラマのように一定で、揺らぎのない風景。


 これが郊外と、その人々と暮らしだ。


 私の高い足音は、舗装の下に寝そべるまだ湿り気を持った土と呼応するようにアスファルトを振動させ、揺るがし、いつかガラガラと音を立てながら破壊して、その下に封印された全てのものを呼び覚ますだろう。好ましいものもそうでないものも、全てをだ。


  国道と水路は終わり、パチンコ屋やドラッグストアの看板が標識のように手招きするエリアへと邁進する。


  私はまだ、自分がどう感じているのかがわからない。感じていないということではない、それが実際にどういったものなのか、今までのやり方では説明できないでいるんだろう。言葉はある日真実を告げて、また次に出会った時には全くの虚構のためにある。「いつでも」「いつまでも」が本当だった試しはない。だから私が正確に伝達できるのは、今感じていることが全てだ。終わってしまえば、そこにはもう何もない。

 

 場所がある。人がいる。当たり前でも何でもない。奇跡的なことだ。


 そういうことだから、私は結局いぶかしげな交通整理員を気持ちよく納得させ、固く結ばれた眉根を解いてあげるためのものは何も持っていない。22年生きて伝わらずじまいのあれこれを、「誰かの迷惑にだけはならないように」ささやかな墓標の下へと葬るくらいしか脳はない。


 そして私はただ、走り続ける。走り続けることで、また速くなる。新幹線と一緒だ。何が新幹線をそんなに速くするのか―


  わからない。それでも、こんなに気がはやるのなら、理由は一つだ。

神様。

神様、何がほしいって

“あかし”がほしいんです。


“あかし”=“証”

=ひょうか、めいよ、おかね。


手に受けて重さのあるものを、

目に見えてわかりやすいものを、


ください。

今時切りぬきなんて持って、

美容室に行く女の子は少ないんだろうか。

それでも、より円滑なコミュニケーションのために

自分自身の満足のために

恥を忍んで、雑誌から

美人モデルの写真を切り取って

バッグに忍ばせる。


髪には、そんなにかけない。

くせっ毛だし、すぐ伸びてしまうもの。

もちろん「すてきにしなくてもいいよ」って

言ってるわけじゃないんだよ?


だから、今日はとても満足。

ありがとう、私の髪を丁寧に触ってくれた人。

ありがとう、「いいじゃない」って言ってくれた家族。


明日も忙しいけど、がんばらなくちゃ。

君は何て言ってくれるかな。

四方八方、あらゆる方向に視界が吸われていく

思いの他、長い闇の中で

誰もが、包むような視線を感じていただろう

あるいは、「見ている」というのは適切でなく

その時、空間全体が修司だったと

言った方が近いかもしれない


やがてぽつぽつと火が点り、消えする

安いマッチの擦りかすが、劇場に芳香を撒く

今はもういない人の思いを一身に受けて、

または修司という空間に胎されて

恍惚と演技する役者達への羨望は、

絶えず私を涙させる


ああ、あまりにシュウジ的ではありませんか

吐き気と頭痛と腹痛で、安定剤を飲む

問題は、吐き気も頭痛も腹痛も

安定剤で治ってしまうということだ


学校は、大好きなんだけど


安定剤は眠くなってよくない

一番体にやさしくて、効能も高いのは

恋であるような気がする

吐き気にも、頭痛にも、腹痛にも、

それはごく物質的な症状にも効力を発揮する


社交辞令だけの自分が、

社交辞令スマイルだけの私が、

あなたで頭痛治してるなんて

ちょっと想像もつかないでしょう?


次会う時もまた、何気なく隣に座って

その気のないような視線を

あんまりそらさないで、じっと見てるよ

忙しくなると、肌に出る。指先にも出る。

世間の女の子達のようには、繕うお金も余裕もないけれど

本当は結構自信のある、指先。

だから時々ささくれ立ったりすると、無償に悲しくなる。


でも、でもですよ。

例えばこうやって風呂上りに

タンクトップ1枚ででPCに向かう

少し丸まった背骨の線とか、

向きになってしゃべってる時の

手の動かし方とか、

そういうことをさりげなく

あくまでさりげなく誉めてくれる人がいたら、

100%間違いなく

恋に落ちてしまうと思うのです。


自分の中から、まだ世界中の人々が知らない

新種の美しさを、発掘してくれる人がいたら。