二風谷 沙流川流域 アイヌ伝承地を巡る / 2015年初冬 アイヌの聖地 二風谷の旅 その5 のつづき

萱野茂二風谷アイヌ資料館へサーチ
アイヌ民族研究家の萱野茂が40年にわたって収集したアイヌの民具をはじめ世界の先住民族の民具や絵画が展示されています。

萱野茂は二風谷アイヌ文化博物館が開館した際に大部分のコレクションを寄贈されていますが、それとは別にこちらの資料館を施設で運営。その中には2002年国指定重要有形民俗文化財に指定されたものも数多くあります。


おおおっ~(-_\)(/_-)三( ゚Д゚)っと感激したのは、魚の皮でできたアイヌ装束ビックリマーク
「チュプ•ウル」
乾燥してパリパリのようですが、雨が降ると柔らかくなるのだそう!着てみたい~。

復元品ですが、鮭が50匹以上つかわれているのだそうです。
ちなみに宮沢賢治の「サガレンと八月」の中で鮭の皮できものをつくるシーンがでてきます。サガレンとはサハリン、樺太のことです。樺太の先住民族にはアイヌもいます。

こちらは鮭の皮の靴。
そういえば、私はアザラシの皮の草履を持っていますが、アザラシの皮のものは見かけなかった…。


世界中でアイヌと赫哲族(ホーチャ)だけが鮭の皮でつくった衣服を着るそうなのです。
赫哲族の魚皮の衣服も展示されていました!

赫哲族は別名をナナイ族といいます。美術ブロガーの方より教えていただいて知ったのですが「シカチ•アリャン」というナナイ族の聖地(二風谷のようなものかも)に残されている、ナナイ族の衣服はアイヌ文様に通じるものがあるとのこと。※横浜ユーラシア文化館にて「岩に刻まれた古代美術 ~アムール河の少数民族の聖地 シカチ•アリャン~」が開催中。
この資料館でもナナイ族とアイヌは共通の文化を持っていると、ナナイ族の生活の絵画が展示されていました!彫刻の文様と仕掛け弓の構造は全く同じなのだそうです。

こちらの展示のスゴイのは触ってもいいとされているところ。鱗がパリパリでした。

縫い糸は綿糸のようですね。


アイヌのものだけでなく世界中から集められた貴重な資料があるので、中にはこんなものも!

世界最大の淡水魚のエンペラーフィッシュ、チョウザメの仲間だそうです。そういえば、日本も鮫の皮を刀の柄につかうという文化がありますね…。


二風谷のある沙流地方で伝えられているアイヌ装束には、獣皮衣、樹皮衣、木綿衣があります。
獣皮衣は鹿と犬(羊ではない)、樹皮がオヒョウやシナノキでつくられるアットゥシです。

木綿衣はチカラカラペとカパラミプがあり、どちらも切り伏刺繍。チカラカラペは晴れ着、カパラミプは礼服だったようですが後に多様化したようです。


二風谷だけでなく、他の集落のチカラカラペも

水玉の木綿の生地に切り伏刺繍されたもの。


二風谷の文様が刺繍された、マタンプシといわれる鉢巻


ジバンとオモンペは元々は交易によって入ってきたものかと。アイヌにとって木綿は貴重品であり木綿が無いときは衿、袖、見頃は、別の布をつかったと書かれていました。

エムシといわれる刀の下には、小袖らしきものも、


エムシアッといわれる刀下げ帯。


ラウンクッという女性のお守り紐


きものカンタービレ♪は衣を中心に紹介していますが、もちろん、アイヌの生活用具や、

信仰のためのもの充実しています。


私、二風谷に来るまで、アイヌについてほとんど知らず、萱野茂のこともアイヌ文化を研究した人というぐらいの認識しかありませんでした。カミングアウトすると萱野茂は外から二風谷に住みついた人だと勘違いしておりました(汗 。民俗学の研究者にはそういった方が多いので。。。

萱野茂はアイヌ民族としてはじめて国政にも参加し、在任中にはじめてアイヌ語で質問を行なったことで知られています。二風谷ダムの用地強制収用裁決の取り消しを求め提訴、裁決は棄却されますが、それによって「国はアイヌ文化に対し最大限の配慮をしなければならないがそれを怠った」とアイヌ文化保護振興法を成立させ、アイヌを先住民族として認めるという功績を残しました。目的が果たされると政界を退き、その際に「人は足元が暗くなる前に故郷へ帰るもの」という言葉を残しています。

二風谷の旅以来、アイヌ文化に興味を持ち調べている中で、「世界わが心の旅 萱野茂」という番組を動画サイトでみつけました。萱野茂が二風谷に住みついたイギリス人医師マンローの故郷であるスコットランドを訪ねる旅なのですが、その中でスコットランドの先住民族との触れ合いがあり、語りを通して伝承していくのは喜びという共通の話があります。アイヌ料理体験でのイナキビの臼つきのときのイウタユポポの唄を思いだしました。染織を深く掘り下げていると魂の触れ合いを知ることにもつながっていく…。

私財を投じてアイヌ文化振興につとめたこの方の功績はとても大きく、そして二風谷にはその意志を受け継いだ人達がいます。


二風谷レポつづきます(^-^)/

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