全国対応で申請支援を行っている行政書士の吉本です。
離婚を前提に夫と別居しており、その夫が生活保護を利用している場合、夫に対して婚姻費用を請求することはできるのでしょうか。また、生活保護利用者である夫に対して婚姻費用を請求することはできるのでしょうか。
結論としては請求することはできません。
生活保護利用者は「健康で文化的な最低限度の生活」を維持するために必要な費用しか受給していませんから、そもそも婚姻費用や養育費を負担することができないのが通常です。
生存権を保障した憲法25条や生活保護法の趣旨・目的に照らせば、原則として、生活保護利用者の生活を最低生活費以下に引き下げてまで、生活保護利用者に対し、婚姻費用や養育費を請求することはできないと考えられています。
そもそも婚姻費用とはどのようなものを指すのでしょうか。
婚姻費用とは、夫婦間における共同生活保持のために必要な費用をいい、夫婦が、その資産、収入その他一切の事情を考慮して分担すべきものです。
そしてその分担は、民法752条の夫婦間の扶助義務の履行としての生活を有しているところ、この夫婦間の扶助義務は、扶養することがその身分関係の本質的不可欠要素と考えられていることから、扶養義務者が自己の生活を切り下げても要扶養者の生活を自己の生活として保持する義務(生活保持義務)であるとされています。
また、養育費の支払いも、親の子に対する扶養義務の履行としての性格を有しており、親の未成熟子(中学3年以下の子)に対する扶養義務については生活保持義務であるとされています。
ではこの生活保持義務と憲法における生存権保障の関係はどうなっているのでしょうか。
前記の通り、配偶者に対する婚姻費用分担義務や、未成熟子に対する養育費支払い義務は、扶養義務者の生活に余裕があるときに扶助するというもの(いわゆる生活扶助義務)ではなく、生活保持義務であるとされています。
この点を重視すれば、生活保護利用者であっても、その生活費を削って要扶養者の生活を保持させるために婚姻費用や養育費の負担を免れることはできないとも考えられます。
一方、生活保護制度は、生存権を保障した憲法25条を受けて、生活困窮者に対し、「健康で文化的な生活」を保障する制度なので「最低限度の生活」を維持するための生活保護費から、婚姻費用や養育費を払わせることは、制度の趣旨・目的に反するとも考えられます。
また、生活保持義務の内容についても、近時は、扶養義務者が、自己の健康で文化的な最低限度の生活を維持したうえで、なお経済的余力がある場合に、その限度で、要扶養者の生活を保持すれば足りるとする見解が有力となっています。
このような見地からは、生活保護利用者に対しては、婚姻費用や養育費を請求することはできないと考えられます。
裁判例でも、「いわゆる生活保持義務は、この生活を維持することが、同時に自己の生活を維持することになるという親子の本質的なあり方と必然的共同生活性を基礎として認められるものであるから、離婚により共同生活をしなくなった親については、自己の生活を最低生活費以下に引き下げてまで、この監護費用を分担すべきことを期待することはできない」としたものがあります。
強制執行に関しても、仮に、生活保護利用者に婚姻費用や養育費の支払い義務を認めたとしても、生活保護利用者は、通常、財産を所有していませんし、生活保護費は差押禁止債権とされていますので強制執行することはできません。
また、生活保護費が預金口座に振り込まれて預金債権になっていても、当該預金原資のほとんどが生活保護費であることが明らかな場合は、同様に強制執行は許されないと解されています。(詳しくは別記事で解説します)
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