2018年 Tramín červený K.O. (Jaroslav Osicka) | リアルワインテイスティングメモ

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ワインの風味は日々刻々と変化していきます。
ワインの今をリアルにお伝えします。

世界的に時代を先取りするワインを日本のワインマーケットは正当に評価しえるであろうか?


2018 Tramín červený K.O., 

トラミン・チェルヴネ K.O.

 生産者: Jaroslav Osicka

ヤロスラブ・オセチカ

 

ヤロスラブ・オセチカは

チェコのナチュラルワインの代表的な造り手ですが、
いわゆる日本のワインマーケットに流通しているナチュラルワインとは一線を画す。
ヤロスラブ・オセチカのいくつかのワインは

一流の芸術作品のように人々の感覚を揺さぶることをやめない。
そこに開かれている世界は、

単純な力強さを表現することではなく、

精神の奥にまで響く調和的世界だ。



*** 味覚的記述と精神性 ***

世界でもっとも芸術性が高いワインは、
いうまでもなくフランスのボルドーやブルゴーニュの銘醸ワインですが、
これらのワインの持つ味覚的要素をどのようにとらえるべきでしょうか?

これらのワインの味わいを構成する要素は、

酸味、甘味(果実味)、渋味、ミネラルの諸要素であり、
ワインを口に含むと、

それぞれの要素同士が対立的緊張関係にありながらも調和的世界を表現し、

ひとつの流れ(味わい)を形成していきます。

そして、これらの要素が極限的・究極的な調和世界を表現するとき、
われわれの精神の奥深いところで

生涯忘れることができないほどの芸術的な感動を呼び起こします。

他方、西ヨーロッパのナチュラルワインの一群は、
これらの味覚的要素の対立を溶解し、

ひとつの親しみのある日常的味わい(日常酒)の世界をつくりだします。
がしかし、極稀な場合を除いて芸術的な感動とはほど遠い凡庸な味わいにどどまります。

ところが、ヤロスラブ・オセチカのワインの味覚的要素の主要なものは、

旨味そのものであり、

この旨味の要素の中に、果実的や酸味、甘味がすでに織り込まれていて一体化している点が特異的なのだ。
味わいに味覚的要素それぞれの緊張感は無く、すでにひとつの調和的世界が形成されているのです。

*** 味覚の主要な要素をであるこの旨味は、

   上質な澱からもたらされている ***
<このワインは、瓶内の澱を攪拌してサーヴィスします>

適度な酸化のニュアンスと上質な澱の旨味が絡み合い、
クリーミーな香味を作り出し、
なんとも言えない味わいの世界にわれわれを導いてくれる。

キャラメルやべっこう飴のようにも感じられ、
ゲヴュルツトラミネールによく見られる強いライチ香は控えめで、
熟した洋梨、ネーブルオレンジのフルーツが上品に香りたつ。

*** この味覚的世界は、同時に芸術的世界観を持つ ***

竹の高貴な香りやべっこう飴の甘く香ばしい香味は、

飲み手の感覚を揺さぶり、

幻想的世界へといざなうよう。

すべての感覚的世界が包み込まれ、

なめらかな液体として喉をスーッと流れ、

身体に染み込んでいくかのようです。

それは、
まるで竹取物語にでてくる月の世界に導かれるような幻想的イメージと
牧歌的なオレンジ色の夕日に照らされているような幸福感をもたらし、
われわれの日常的生活に芸術的価値を与えてくれます。