ワインコマンダリー博多誕生から遡ること半年前から有志でワインの勉強会をしておりました。
ソムリエ藤田忠邦さんの講義内容を記します。5000文字制約の為、第7回目の後半です。

5.ヴァル・ドゥ・ロワール(Val de Loire)
ロワール河はフランス中央山岳地帯に源を発し北上したのち大きく西に迂回して大西洋に注ぐ全長1020Kmのフランス最長の大河。この流域は華麗な古城が点在しフランスの庭園とうたわれているが同時にこの周辺のいたるところでさまざまな種類のワインが生み出されている。(ぶどう園面積12万ha内A.O.Cワイン36000ha)相対的に澄みきったやわらかい味の若いワインで質のよいチャーミングなワインと言われるがボルドー、ブルゴーニュの偉大なワインと比較されるべきのものではない。エチケットにはぶどう園の名前は出ずほとんどが村または地区の表示となる。
①フランス中央部 辛口の白が有名 2000ha
石灰質の土壌を好むソーヴィニヨンブラン種(この地方ではブラン・フュメと呼ぶ)から作られるプィィ・フュメ及びサンセールが有名。他にシャスラ種から作られるプィィ・シュル・ロワールがある。
②トゥレーヌ地区 甘、辛、発泡性の白。赤も優れている。10000ha
白ワインはシュナン・ブラン種(この地方ではピノー・ドゥ・ラ・ロワールと呼ばれる)
赤・ロゼは17世紀にボルドーから移植されたカベルネ種
ヴヴレー びん詰熟成により弱発砲性(ヴァン・ペティアン)となる
モンルイ 軽やかできめの細かい白
シノン カベルネ・フランによるさわやかな赤
ブルグイ シノンよりやや固く熟成に時間をかけたほうが良い
③アンジュおよびソミュール地区 ロゼ主体 15000ha
ソミュール 発泡性ワインで有名(シュナン・ブラン)
コトー・ドゥ・ローバンス ロゼ主体
コトー・デュ・レイヨン 甘口(貴腐)ワインが有名。ロゼも多い
コトー・ドゥ・ラ・ロワール 上品な果実の香りの強い白
④ナント地区 辛口の白主体 9000ha
ぶどう品種はミュスカデ、同じ名前の少し緑がかった辛口の白を産み出している
ミュスカデは1709年ブルゴーニュ地方からムロン種を移植したもの
セーヴェル・エ・メーヌ 全産出量の80%を占め最も評判が高い
コトー・ドゥ・ラ・ロワール
ミュスカデ

6.コート・デュ・ローヌ
北部のヴィエンヌから南部のアヴィニヨンにかけて約200kmにわたる地帯がコート・デュ・ローヌ。日照量が多いためアルコール度の高い力強いワインが多い。量的には赤が主体で全体の約9割(ロゼを含む)ぶどう園4万ha
(北部)畑の殆どが花崗岩質でできた急斜面。赤はシラー種単独。白はヴィオニエ種単独かルーサンヌ、マルサンヌの2種類混醸(香り高く腰の強い赤のコート・ロティ、辛口の白で有名なシャトー・グリエ、洗練された長命の赤エルミタージュ)
(南部)石ころの多い台地に広がり武道も多品種を混醸して用いる。赤は主としてグルナッシュ、サンソー、シラー、ムールヴェードル等。白はルーサンヌ、マルサンヌ、ブールブーラン、ユニ・ブラン等。(なめらかで力強いシャトー・ヌフ・デュ・パープ、バラ色のロゼで有名なタヴェル)

7.アルザス
フランスの北西部、ドイツ国境に隣接し畑はライン河に面したヴォージュ山脈の東斜面に南北約120kmにわたって細長く連なる。生産量の9割が辛口の白。ぶどう園面積12000ha土壌の質はさまざまで泥灰岩に砂、石灰岩、砂利などが混じりこみ土地土地によっての特徴を示している。北部地区をバ・リン(Bas Rhiu)南部地区をオー・リン(Haut Rhiu)と呼ぶが一般にオー・リンの方が格上と見られる。アルザスワインの特色はエチケットに必ず原料のぶどうの品種名が表示されているところにある。(例外的に村の名前を表示できるところが何ヶ所かある。)
①リースリング 最も高貴な品種の一つ。繊細かつバランスのとれた辛口白
②ゲヴェルツトラミネール 優れた芳香を持ち個性的。出来のよい年は甘口にも仕立てられる。
③ミュスカ マスカットの香りの辛口ワイン。食前酒によく用いられる。
④シルバネール さわやかで軽いワイン。若いうちが飲み頃。
⑤ピノ・グリ アルザスではトケイと呼ばれる。果実の風味に富んでいる。
⑥ピノ・ブラン クレヴネールとも呼ばれまろやかなワイン。
このほか数種の品種を混醸する場合がある。ピノ・ブラン主体に数種を混ぜたエーデルツヴィッケル、リースリングとゲヴェルツトラミネールを混ぜたカッフェルコッフなどが有名。通常アルコール度数は8度となっているが銘醸アルザスワイン(Grand Vin d'Alsace)の場合は11度以上と規定されている。

8.ラングドックとルーション(Languedoc et Rouussion)
セヴェンヌ山脈を背にして地中海に臨むフランス最南端のワイン生産地がラングドックとルーションで40万haのぶどう畑からフランス全ワインの40%が生産されている。しかしこの大半が日常消費用ワインでA.O.Cは面積で8%数量的に4%を占めているにすぎない。
①ルーション フランスの天然甘口ワイン(ヴァン・ドゥ・ナチュレルVin de Naturel)の75%を生産していることで有名。
②ラングドック 天然甘口ワインを産するとともに白、赤、ロゼさらには発泡性ワインと多彩なワインをうみ出している。

9.プロヴァンス(Cotes de Provence)
ローヌ河左岸地区から地中海沿いにイタリア国境まで(つまりマルセイユからニースまで)広がる地域。プロヴァンス地方はフランスに初めてぶどうの樹が持ち込まれた最古のぶどう栽培地。石灰岩質の砂まじりの変化に富んだ地形と温暖な気候で多様なワインを産出するが全体としては軽くさわやかな口当り、新鮮な香りを持つのが特徴。古くから赤、白、ロゼのいずれも産しているが人気はロゼに集まっている。
原料ぶどうは赤用がカリニヤン、サンソー、グルナッシュなど、白用ではユニ・ブラン、クレーレットなどが主に栽培されている。

10.南西地方(Sud-Quest)
①ベルジュラック ボルドーと同じ品種でつくられたきめの細かい赤と口当りのよい白
②モンバジャック ソーテルヌと同じ方法による甘口の白
③ガイヤック 中心となるのは白、新酒に人気があり、ガイヤック・ムスーも有名
④ジュラソン 黄金色をした甘口、辛口の白ワイン
⑤テュルサン 非常に辛口で独特のクセを持つ白ワイン

11.東部国境地方
①ジュラ ヴァン・ジョーヌ(黄色のワイン)サヴァニヤン種、独特のブーケ、長命。
ヴァン・ドゥ・パイユ(藁のワイン)香り高いデザートワイン。
②サヴォア 軽く繊細な白ワイン

12.ネゴシアンについて
現在フランスには6000~7000のネゴシアンがあるといわれているがその中で大手と目されるものは150~200社程度。代表的なネゴシアン(ブレンドを行いワインメーカーを兼ねるもの)は次のとおり。
1)国内市場を主とするネゴシアン
Societe des Vin de France ソシエテ・デ・ヴァン・ドゥ・フランス
Castel Freres カステル・フレール
Nicolas ニコラ
2)輸出量の多いネゴシアン
(シャンパーニュ)
Moet et Chanden モエ・エ・シャンドン
Veuve Clicquot Ponsardin ヴーヴ・クリコ・ポンサルダン
Lanson Pere et Fils ランソン・ペール・エ・フィス
Taittinger テタンジェ
Ppmmery et Greno ポメリ・エ・グレノ
(ボルドー)
Barton et Guestier バートン・エ・ゲスティエ
Calvet カルベ
Cordier コルディエ
Delor デロール
Cruse et Fils クルーズ・エ・フィス
(ブルゴーニュ、コートデュローヌ)
Mommessin モメサン
Bouchard Pere et fils ブッシャール・ペール・エ・フィス
Aujoux オージュ
Henri de Villamont アンリ・ドゥ・ヴィラモン
Piat ピア
Bichot ビショー
Patriarche Kriter パトリアッシュ・クリテール
Joseph Drouhin ジョセフ・ドルーアン
Louis Lattour ルイ・ラトゥール
Leroy ルロア

(藤田忠邦氏 1987年11月15日(日)講義資料1-11,1-12,1-13,1-14より)