二百曲に余る♥水越けいこさんのお歌のうち、曲全体から春の色と香りが溢れてくるのが唯一、掲題曲だと筆者は思う。もっとも、この曲のモチーフは必ずしも「春」が一般的に象徴する喜び、楽しさを手放しで謳歌するものではない。「あなた」との愛の復活を、それが可能になるその日を夢見る女性が主人公だからだ。しかしその甘酸っぱさが核となって、それを包み込むように曲全体から麗(うら)らかな春が匂ってくる。そういう曲なのだ。そんなこともあって、筆者が♥けいこさんと春から連想するのは♥『葡萄棚の下で』しかない。
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♥『葡萄棚の下で』(詞・曲:水越恵子/編曲:矢野誠)
<#14 "Ane-mone" (1988/6)
【現サイト投稿者:hymer89さん】
♪「春の匂いに丘をくだる 固く手を握って/今も大事なワンピースの 水玉がゆれていた」(詞:水越恵子)
この詞のなんと絵画的なことだろう。そういう歌の聴き方はよくないとは自制しつつも、筆者はどうしても、水玉のワンピースを着た♥けいこさんご本人が「あなた」と手をつないで若草の丘をくだる情景を想像してしまう。そしてその情景を美しいと思う。
♪「会える気がして あの日を探している」(詞:水越恵子)
どうか♪「あの日」に早く出逢えますよう。
【葡萄畑と若草の丘】
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なお、歌い出し数小節を、他の曲では聴いたことがないようなスタッカートで♥けいこさんが歌っているのはなぜだろう。これについて筆者にはひとつの「仮説」があるが、まだ十分考え詰めていないので他人(ひと)さまに何か言うことは差し控える。曲のエンディングもユニークである。詞を歌い切った段階ではメロディが完結しないのだ。それで♥けいこさんは最後に♪「フゥー」と短いヴォカリーズを足す。
バックの演奏、特にストリングスが各コーラスの冒頭では沈黙しているが、曲が進むにつれて次第に高揚してくるこのアレンジは素晴らしいとしか言いようがない。■