台湾で使用されているローマ字表記法について | 台湾華語と台湾語、 ときどき台湾ひとり旅

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※2020年4月の記事に加筆しました。


台湾でのローマ字の扱い

台湾で正式に採用されている音標システムは「注音符号」(ボポモフォとも言う。詳しくは🈁)なので、台湾でのローマ字の扱いは日本での扱いとほぼ同じ。基本的に漢字や注音符号を読めない外国人のために、地名や氏名を表すときに使う。日々使用するわけではないし、学校でそれほど一生懸命教わるわけではないので、はっきり言うとかなり適当である。いろいろな表記法が混在している。



台湾は日本の状況と似ている

日本もヘボン式とか何式とかいろいろあって決まりはよくわからないのが現状。「しゃしゅしょ」の書き方とか、伸ばす音とか、学校で習う表記法もコロコロ変わる。時代によって人によって「しゃ」を「sha」と書いたり「sya」と書いたり、「加藤」も「Katou」や「Kato」や「Katoh」や「Katō」等、本当に人それぞれ。


政治問題化しやすいローマ字問題

台湾でも基本的には日本と同じような状況であるが、台湾には、文字を始めとする言語表記ルールが「政治問題化」しやすいという台湾独特の傾向がある。統独の(藍と緑の)のせめぎあいがいつでもどこでもあるので、ローマ字表記一つで大モメになってしまう。



2000年代の《通用ピンイン》

中国の《漢語ピンイン》とはちょっだけと違う、台湾独自の《通用ピンイン》というものが民進党陳水扁時代(2000年〜2007年)に混乱の末採用された。法案に強制力はなかったが、第1次民進党政権時代、首長が民進党員の自治体ではけっこう浸透していた(道路標識や駅名などで使われていた)。が、台北市は当時ちょうど馬英九市長(国民党)だったので、政府(民進党)の言うことはガン無視して《漢語ピンイン》で押し通した。



2008年国民党政権奪取後、すぐさま「漢語ピンイン」へ

そして2008年国民党に政権交代すると《通用ピンイン》はすばやく《漢語ピンイン》に変えられてしまった。本当に早かった。

『中文譯音使用原則(2002年版)』で示された「通用ピンイン」の使用ルールが⬇️




2009年版では「漢語ピンイン」の使用ルールにごっそり変わった⬇️



現在の状況

現在はどうなのかと言うと、基本的にそのまま。使いたいなら《通用ピンイン》でも《漢語ピンイン》でもどちらでもいい、というスタンスのようである(前述した理由で、台北で見かけるローマ字は《漢語ピンイン》が多い)。


伝統的に使われているのは《ウェード式》


ただ、台湾でいまだによく使われているローマ字は、上述した《通用ピンイン》でも大陸の《漢語ピンイン》でもなく《ウェード式》である。

例えば高雄の「Kaohsiung」。これが《ウェード式》。そう、漢語ピンイン等との違いはいろいろあるが、一番特徴的なのは、漢語ピンインで「x」、注音符号で「ㄒ」で表す舌面音を、ウェード式では「hs」の2文字を使って表すというところ。台湾の人からもらう名刺のローマ字表記もウェード式が多い。


《ウェード式》の特徴

もし例えば名前の中の「孝」の字が「xiao」ではなく「hsiao」と綴られていたら、それはウェード式である。

あとは有気音と無気音に同じローマ字を使い、有気音の方にアポストロフィー(’)を使って区別する、という点もウェード式の特徴。なのでちょっとめんどくさい。「高」と「考」は漢語ピンインだとそれぞれ「gao」と「kao」だが、ウェード式だと「kao」と「k’ao」になる。