もう、逃げない
その日、わたしは一睡もしませんでした。
わたしは、Aさんを殴ってしまったようです。
「ようです」なのは、言い訳でもなんでもなく、本当に記憶にないのです。
いま、思い出すのは、わたしが先輩たちに羽交い締めにされて、Aさんが尻餅をついて倒れていた光景で、それ以前の記憶が飛んでいます。
でも、トラブルを起こして、わたしが皆に迷惑をかけたことだけは確かでした。
前にも書きましたが、
どんな理由があれ、手を先に出したほうが悪い。
これは、間違いありません。
子供の喧嘩ではありません。
企業に勤める社会人です。
暴力を振るったら、責任を取らなければならない。
一睡もせずに考えました。そして、決意したのです。
辞めよう。
でも、犯した罪のけじめはつけなければなりません。
わたしは、翌朝、7時に出社し、オフィスの掃除を始めました。
床を拭き掃除し、社員全員の机の上の拭き掃除をし、固定電話一台一台、丁寧にフキンで拭きました。
わたしにできる皆へのお詫びは何か?
入社してすぐ、役員の方がこんなことを言っていました。
「机と電話は毎日、きちんときれいにしないといけない」
その言葉を思い出しのたのです。
新人の時の気持ちになって…。
こんなことしか思いつかなかったのです。
そして、Aさんが出社してくるのを待ちました。
一人一人、出社してきた上司や先輩、同僚を出迎え、頭を下げ謝罪して回りました。
皆、なぜか、
「えっ?ああ、いいよいいよ別に…」
「うんうん、わかったわかった」
計ったように、腫れ物に触るような態度です。
少しは期待したのですが、笑い飛ばしてくれる人は一人もいませんでした。
それくらい、昨日のわたしは醜かったということだし、やっぱり、わたしの(笑い飛ばしてくれるかも)という考えは甘いということです。
出社時間ギリギリに現れたAさんは、立って待ち構えるわたしを見向きもせずに、席につきました。
わたしはその背中を追いかけ、
「Aさん、昨日は申し訳ありませんでした。
とんでもないことをしてしまったと自覚しています。
ほんとうにすみませんでした」
Aさんは、なにも答えず、わたしを完全に無視したままでした。
その日以来、わたしが会社を辞める半年後まで、Aさんとは一度も口をきかないままでした。
業務で、話をしなければならない時は、何度もありました。
それでも、Aさんは、徹底してわたしを無視し続けました。
最後まで一度も目すら合せてくれなかったのです。
もっともだと思います。
彼はわたしの謝罪を受け入れる気がないのですから。
おかげで、会社を辞める決心がますます固くなります。
わたしが会社を辞める理由。
その理由は、
1、会社員という仕組みで働くことができない。
2、通勤ラッシュ、タイムカード、残業、チャイムが鳴ったらお昼ご飯が食べられる。上司や先輩の誘いを断れない。などなどの、慣習に素直に従うことができない。
3、先輩を殴るという暴挙を働いた自分に罰を与えなければならない。
4、なによりも自分に嘘をつき続けていたことが許せない。
この会社で会社員として働く自信がないと、入社前に気づいておきながら、自分に嘘をついて入社した結果、わたしのために指導、励まし続けてくれた上司や先輩を裏切る結果になったこと。
この4項目を見過ごすことができなくなったからです。
不動産の仕事は決して嫌いではありませんでした。
でも、
犯した罪は償わなければならない。
このことから、絶対に逃げてはならない。
そう、心に決めたのです。
逃げるために辞めるのは簡単です。
でも、わたしは、罪を償うために辞めるのです。
口でそれらしいことを言ってるだけだ、と言われれば、その通りかもしれません。
でも、わたしが、
その意識から逃げないことが大事でした。
ここで逃げたら、一生逃げ続ける人生を送ることになります。
わたしは、真剣に生きてこなかった。
ずっと逃げ続けていた。
もう十分楽をしただろう?
こんな自分という服を全部脱いで、真っ裸の自分に戻って、一から出直したいと思ったのです。
半年間、しっかり罪を償って辞めよう。
つづく
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