社長直々のパワハラ
Nさんは、わたしにこう言いました。
「わたしは、Aさんにきちんと謝罪してもらいたい。
そして、二度と暴力を振るわないでほしい。
それを、約束してほしい。
そのことを、社長に言おうと思っています」
「Aさんは社長に言われれば悪いと思っていなくてもいくらでも謝るでしょう。
それは、なんの謝罪にもなっていません。
本当に謝罪の気持ちがあるなら、書面で”謝罪文”を書いてもらって、その中にきちんと、「二度と暴力を振るわない」という文言を書いてもらってください。
そして、署名と捺印をきちんとしてもらうこと。
そこまでやれば、間違いなくAさんに対する抑止力になります。
自分は100パーセント被害者でなんの落ち度もないこと。
そこまでやらないと絶対に許さないという覚悟を社長に見せることにもなります。
できますか?」
翌日、Nさんは社長と面談します。
ことの経緯を伝えたうえで、わたしが言ったことをそのまま伝えました。
そのあと、順番に社長はAさんと面談しました。
そして、Aさんのあと、再び、Nさんは社長に呼ばれました。
「これでいい?」
社長は、一枚の書面を差し出しました。
そこには、
「わたしの粗暴な振る舞いで大変不快な思いをさせて申し訳ありませんでした。
二度とこのようなことがないようにいたしますので、お許しください。
もうしわけありませんでした」
という、パソコンで打ち込んだ文と、日付とAさん直筆の署名がありました。
「捺印がありません。
捺印がないと、公式な文書と言えません。
捺印もお願いします」
Nさんがそう言うと、そこまで、終始、静かな物腰だった社長の態度が一変しました。
「君さ〜。
ぼくがわざわざ、Aさんに頼んで、君らの喧嘩の仲裁をしてあげて、謝罪文までこうやって持ってきたのに、それでも君は納得しないと言うの?」
「ここまで、やってくださったことには本当に感謝しています。
わたしは、ただ、捺印もお願いしますと言っているだけです。
最初に署名と捺印をお願いしますと申しあげました」
「じゃあ君は、Aさんを訴えようというの?
そこまでやらなきゃいけないの?
署名があれば十分でしょう」
「わたしは、ただ、二度と暴力を振るわれたくないだけです」
「だったら、これでいいじゃない」
「ダメです。
彼女とは、一昨日から今日まで社内で何度も顔を合わせています。
でも、一度も謝罪はないし、顔を合わそうともしません。
それに本来謝罪の気持ちがあるならパソコンで打った文書のはずはありません。
本当に誠意があるなら自筆だと思います。
でも、彼女に誠意がないことは態度を見ていればわかります。
だから、また暴力を振るわれる可能性があります。
だから、文書に署名と捺印が必要なのです。
抑止力として、正式な謝罪文が欲しいんです」
「きみね。ちょっと、おかしいよ。
ぼくがここまでやったのに、それでもダメだと言うの?」
「そういうことではありません」
「前々から思っていたんだけど、きみ、ちょっと真面目すぎるよ。
そんなんじゃ、お客さまに対してもそういう態度を取ってると思ってしまうよ。
お客さんにもそうやって当たってるんでしょう」
「真面目の何がいけないんですか?
それに、お客さまの話はこの場では関係ないと思います」
「そういう臨機応変じゃない態度がよくないとぼくは言ってるんです」
「言っている意味がよくわかりません」
「ほら、すぐにそうやって逃げる。
精神的にちょっと疲れてるんじゃないの。
ちょっと叩かれたくらいで騒ぎすぎだと思うよ」
「暴力を振るわれたくないだけです」
「だったら、心療内科を紹介しようか?
ちょっと、そういう心配もあるんじゃない
の。
最近、ちょっと早口だし、会話をかぶせてくるようなところもあるしね。
とにかく、捺印はもう必要ない。
わたしが証人だから。
これで、もう終わりにしなさい。
わかったね。
納得できないんだっだら、勝手に出るところに出ればいい。
とにかく、この件はもう終わり」
手で払うようにして、Nさんに部屋から出て行くようにと促したのです。
これらの会話は、Nさんが、直後に取ったメモの一部始終です。
この社長の言葉からわかったことは、
◯この問題を女性同士の痴話喧嘩程度にしか思っていないということ。
◯社長という権威をふりかざすタイプの社長であるということ。
◯パワハラがなにかを全くわかっていないタイプの社長であるということ。
◯傍若無人にやりたい放題の人間が社長をやっている会社だということ。
◯社長に逆らうと、クビになる会社であるいうこと。
これらのことを踏まえて、わたしがNさんに伝えたことは、
「こんな会社でも会社にいたいのなら、思い切り、社長に迎合しなさい」
ということです。
心で、
「こいつはバカかもしれない」
「イエスマンだけを求めている」
「わたしは本当はこいつの言う通りにはしたくない」
「こんな奴についていけない」
そう思っていて、その通りに行動したいなら、
会社を辞めるべきです。
そんな奴が、社長に座る会社でも、そこでキャリアを積んでいきたいと思っているなら、その想いが勝っているなら、
迎合しなさい。
そういうことです。
「そんな社長が率いる会社でもいたい?」
「いたいんです。辞めたくありません」
「転職しようとは思わないの?」
「わたしはこの会社での今の仕事が好きなんです」
「だったら、社長にすぐに、『今日はすみませんでした』
と、手紙を書きましょう。
そして、自分が、いかに非礼であったか。
社長の行為の有り難みをいかにわかっていなかったか。
今後、今回のようなトラブルを二度と起こさず、誠心誠意会社のためにどのように尽くすのかを手紙にしたためるべきでしょう」
と、伝えました。
「メールではだめですか?」
「ダメです。
きちんとした便箋に、丁寧にしたため、明日、朝一で、社長が出社する前に社長の机に置いておく。それくらいした方が良いでしょうね」
そう伝えました。
「おそらく、社長はあなたを一気に見直しますよ」
「なぜ、そこまでしなくてはならないのですか?」
「Aさんがそこまですると思いますか?」
「思いません」
「そこまでしてもらって、嫌な気持ちがする人間がいますか?」
「いないと思います」
「そういうことを手紙で社長に伝える人間が今までいましたか?」
「いなかったと思います」
「あなたがは、会社でキャリアを積みたいんですよね?」
「はい」
「だったら、それができない理由が他にありますか?
創業社長が喜ぶことをしない理由がありますか?」
Nさんは社長に手紙を書きました。
翌、朝一番に会社に行って、手紙を置きました。
「社長が一社員のためにここまでしてくださったことを本当に感謝しています。
昨日までのことは全て忘れて会社のために全力を尽くします」
そう手紙にしたためて。
数日後、社長はNさんの捺印の入った謝罪文をAさんに手渡しました。
いま、少なくとも、社長との関係は良好だそうです。
それどころか、社長の方から話しかけてくることがほとんどで、最近では、重要な案件も任されるようになったそうです。
暴力女AとNさんは、お互いがまったく絡まない部署に異動しました。
AはしばらくのあいだはNさんに話しかけてきませんでした。
しかし、Nさんと社長が親しげに話している姿を何度か見て、Nさんのご機嫌をとるような態度を見せるようになったそうです。
何が正しいか?
他人は変えられません。
自分が変わることが正しいのです。
自分が変われば、他人も変わるかもしれません。
でも、以前とは変わったあなたは、そんな他人のことなど、全く気にならなくなっているので、
他人がどうであろうが関係ありません。
自分が変わり、自分を知れば、他人のことが手に取るようにわかってきます。
でも、それすら関係ないのです。
自分が変わるとは、それほど、大きく生き方が変わることなのですから。
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