ウソだってなんだってあり
緑子さんは、前学年の係の人にメールで連絡をとりました。
”前学年の係の人”とは、同級生のママの中で唯一、前年にパンジー会で役員をやっていた黒実さん(仮名)です。
「他のお母さんからわたしが広報に決まったということを伺いました。どのような経緯で決まったのか教えていただくことはできますか。メール、電話、どちらでも大丈夫です。よろしくお願いします」
緑子さんは、感情的にならないようにできるだけ注意して送信しました。
返信はすぐに来ました。
「緑子さんがどうしても引き受けられないと言われるのなら、もう一度係を決め直します。やりたいという人もいましたから」
(えっ!?ほかにやりたいという人がいたの?だったらなぜわたしなの?)
それ以前に、
(わたしの質問の答えになってない。話が通じてない。こんな人だったっけ?)
緑子さんの混乱は増すばかりです。
黒実さんは、某最高学府を卒業して、一流企業で働くエリートでした。
かといって、高飛車な態度を取るわけでもなく、群れることが好きというわけでもありません。
なにしろ、多忙な方なので、保育園の集まりに参加することもほとんどありませんでした。
緑子さんは、1、2度、ランチ会をともにしたことがありましたが、気取らない気さくなママという、好印象を抱いていました。
その程度のかかわりですから、黒実さんがパンジー会の役員をやっていたことを知りませんでした。
その黒実さんから、まるで別人のようなメール。
とても、同一人物とは思えませんでした。
(この人は、頭が良すぎて、文章が言葉足らずなのかもしれない。直接電話で話したらきちんとわかるかも?)
緑子さんは、そう思うように心がけ、電話をかけてみようと思うとご主人に相談しました。
「この人は、自分にとって都合のよくなるウソを簡単につける人だと思う。『ほかにやりたい人がいる』わけがないよね。この人の住む世界では、この言葉が脅し文句として通用するんだろうね。だから、もう相手にしないほうがいいと思う。この人から真実も本音も引き出せないよ。君と話したことを、他に人にはまた違う形で、自分にとっては都合のよくなるように、君にとっては悪いように伝えられるから、もう関わらないほうがいいと思う」
(きっとそうなんだろうね。そうなんだろうけど、やっぱり納得できない。このままだと、わたしが一方的に、わがままで自分勝手な人間にされてしまう…)
緑子さんは、携帯電話にかけてみました。しかし、出ません。何度電話をかけても出ないのです。
仕方なく、自宅へ電話をかけてみることにしました。携帯電話も自宅の電話も、「緊急連絡網」というプリントが同級生全員の住所も合わせて配布されているので、かけること自体は不自然なことではありません。
電話には黒実さんのご主人が出てきました。
「☆さんのお宅ですか?」
「はい、そうです」
「黒実さんはご在宅ですか?」
「いえ、そのような者はおりません」
「えっ???あの…、☆黒実さんのお宅ですよね」
「☆ですが、そのような名前の人はいません。間違ってますよ」
「そうですか…。失礼しました…」
電話を切った緑子さんのおかしな様子にご主人が「どうだった?」と、たずねます。
「危ない人たちなのかもしれない…」
事情を聞いたご主人が、
「いくらなんでもそんな話はないよ。仕方ない。君とは話したくないのかもしれないね。僕がメールしてみるよ」
と、黒実さんにメールをすることになりました。
「緑子の夫です。パンジー会の広報になった経緯について、事情を伺いたいので、自宅に電話をしてもいいでしょうか?」
それにたいし、すぐに返信が来ました。
「ですから、緑子さんにも申し上げましたが、やりたくないというわがままを通したいのなら、やっていただかなくてもけっこうです。他のお母さんにわたしが頭を下げてお願いしますから」
さきほどの「やりたい人がいる」というのとは、かなりニュアンスが違います。
やっぱり、ウソをついているのだろうし、このままではラチがあきません。
「よし、じゃあ、僕が電話をかけてみるから、これでダメだったらあきらめよう。いいね」
「うん。なんか、もうわたし怖くなってきちゃった」
ご主人が電話をかけます。
名簿にある電話番号です。
また、すぐに出ました。
黒実さんのご主人です。
「もしもし、☆さんのお宅ですか?」
「そうですけど、黒実さんて方ならいませんよ。うちは、同性ですが、その方とはなんの関係もありませんから」
「でも、ご主人の◯◯さんですよね。☆◯◯さんですよね。黒実さんは奥さんですよね」
「わたしは☆◯◯ですが、黒実さんて方はいません。よく間違われるんですよ」
「あの~、別に、ケンカをしようとか、文句を言うつもりはないんです。事情がわからないので伺いたいだけなんですけど。黒実さんに変わっていただけませんか?」
「そう言われても、わたしはその人が誰だかわからないし」
「話したくないなら話したくないとおっしゃっていただければいいだけで、そういうのはちょっと…」
「もういいですか?切りますよ」
電話は切られ、ご主人も呆然とするしかありませんでした。そして、緑子さんに言いました。
「だから、関わらないほうがいいって言ったでしょう」
つづく
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