不完全な切り紙細工 -57ページ目

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 天頂のゼウス
 南中するアポロン
 金色のヴィーナス

 彼らが支配する天空を
 彗星がいくつも知らん顔で駆け抜けていった

 雨は間違いひとつなく土地に降り注ぎ
 静かな恵みをもたらした

 足元の水溜りに映った空が
 風に吹き飛ばされ落ちてきた小虫に乱されたのは

 君の道がそこにあったからなのだろう

 遠きものと近きものの予想できなかった邂逅

 正午少し過ぎた街はずれの
 出会いと過ぎていく宇宙

 日なかの空から落ちて来て煌めいていた
 雨粒のような時間が

 一滴(ひとしずく)一滴に映しこまれて
 さらさらと集まっては
 美しい川になって流れ去る

 予想されたものも予想されなかったものも
 皆

 セ・ラ・ヴィ
 世界とはきっとそんなものなのだ