不完全な切り紙細工 -38ページ目

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 





 
 風鈴の鳴るのを聞いている

 久々に開けはなした窓の

 颱風の先触れのような熱く湿った風を

 涼風に変えてしまう風鈴を

 りりりちりりりちりりんりーん


 嵐が烈しい姿で夏空に伸び上がり

 熱気すらも吹き飛ばすようになるとは思えない

 静かに夏風と風鈴と

 時折太陽を避けるように斜めに飛んでいく鳥たちの細い声

 ぴぃいと風鈴に相和していく




 夏にすべてを投げ出して

 行くと心に決めでもしたように

 風と鈴

 連れ立って

 熱い空へと舞い上がる


 
 ああ

 嵐がやってくるのだ

 風鈴が早鐘のように鳴り始めた








 

Acoustic Dreams by Manuel Ochoa
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