夕刻
強い睡魔に襲われて眠った
ずっと疲れていたかのように
その間に
昼間の風は鎮まって
暗い空には薄雲
月は見えない
見えたとしても新月が近い
きっと消え入りそうに細い眉月だろう
沸き上がる熱き蒸気の雲は何処へ行ったのか
まるで来るべき嵐の前に
ひととき影をひそめているかのように
空気は息を殺している
今は引き退いて身構えているのか
潮の干満さえ停止したように
のろい時の歩み
微かな風はまだ湿度が高い
遠景が滲んでいるような気がする
湿度の高い空気は屈折率が違うのだろう
ところどころ大きく光が曲がる
だから
こんなふうに夜が見えるのに違いない
太い絵筆で描いたような夜景
僕の目はいつもそんなつまらないことに夢中になる
潮騒も遠い
遠い
何もかもが
濡れて膨れ上がっているくせに遠い
暗い紺色の空の薄皮のような雲
どうやって
どうやってと急に思った
いや生きていくことについてではない
ただ
この夜がどうやって明日の
朝ぼらけに移り変わっていくのかと
でも
それは数時間のことであるはずなのに
今後何年もの
推移であるように
気の遠くなるほどに長い時間のように思える
ベランダに置いた椅子に座って
風呂上がり
微かな風にすがりながら
夜を見る
遠い昔
人の夜の時間はどのように長かったのだろう
特に
星も見えない今夜のような夜には
僕はきっとその長さに耐え切れずに眠るだろう
