不完全な切り紙細工 -39ページ目

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 気だるい夏の遅い朝

 パジャマのままで窓辺に寄りて

 朝の樹々と木漏れ日を見る

 繰り返し揺れているレース模様

 不思議なことに

 何処かから煙草の匂いがする

 誰もいないはずなのに

 庭で見知らぬ鳥が鳴いた

 時間はまだゆっくりとしか歩き出さない

 遠くで熱気が膨れ上がるような風の音

 ラジオからサックス

 板間の足の静かに望んでいる平和な一日

 空は蒼いだろうな

 道は乾いて人気がないだろうか

 高い空の上の飛行機の音

 朝から何かを懐かしむ月曜日

 誰かが庭に降り立つ

 今頃鳴ったノロマな目覚し時計

 少しダブついた光さえ眩しい

 幻のひとの肩を抱いて

 ラジオを消して

 新しい音楽を聴く

 今日はこのまま何時迄も

 キッチンで外を感じていようか

 コーヒーのマグを手に持ったまま  




























Small Songs in a Small Kitchen by Adriano Fontana