不完全な切り紙細工 -35ページ目

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 夏が膨れ上がってくる

 大きな颱風が来ると天気予報がずっと言っている

 きっとそれは僕の愚かな想像力を超えたものなのだろう


 この青い空を見上げていると

 世界は底抜けに平和そうで輝きに満ちているではないか

 なのにその平和は損なわれ

 雲は渦巻いて空を覆い長い厄災がやってくると

 この快い湧き上がってくるような風の勢いは

 そのことが正しいと言っているようだ






 烈しい日照

 猛威をふるう風

 そんなことが・・・と思うけれど






 まだ育ちきっていないキウイの実が幾つも枝から

 夏の到来を

 その熱い実りを歌っているのに






 まだ育ち切らない君たちを

 この空の下から避難させなければいけない時が

 やってくる

 そう天気予報が繰り返し告げている






 ああ

 できるなら 夏よ

 生きることの重々しい困難をではなく

 その抜けるような快楽を

 われらに











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