闇の奥から 完全なる闇ではない 微かに物の影も形も見えて すべてではないけれど見える色もある そんな夕闇の向こうから 囁(ささや)く声が聞こえてくる はるか遠い未来の人たちが 懐かしんでは語っている夏の夜の 夢のような思い出が 川面の黒 透明な漣(さざなみ)に重なって揺れる舟 舟に重なって揺れている 愛し合う男と女の 未来の記憶が 波音が舟の底から そっと漏れ出すように 聞こえてくる 月の出ていない 小さな夜の細(さざれ)歌