夏祭りの夕べ | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 
 低く垂れこめた雨雲の合間をぬって

 小さな祭りが始まった

 ごく当たり前の

 変哲のない


 毎年のように

 盆踊りの太鼓が夜空に鳴って

 飾った櫓(やぐら)の上の光のなかで

 浴衣姿のひとたちが提灯と揺れ






 水風船のヨーヨーが水から釣り上げられたり

 落ちて水を跳ね返したりするのも

 スーパーボールのプールに屈(かが)みこんだ

 子どもと大人が目を輝かせて笑うのも

 押すな押すなの覗き合いだって

 いつもと何一つ変わらない









 金魚は二匹すくってオマケも三匹もらったから

 後はお菓子でも食べながらジュースを飲めば

 いつもより少しだけ幸せな夏祭りになるのかな




金魚を入れたビニール袋持ってるのだあれ?




 いつものように

 毎年のように始まって人が集まりひけていく

 違うのは新顔がやってきて旧顔が少し減り

 みんなが一歳ずつ大きくなったこと

 そのことも祭りもなんだか照れくさいほどに

 センチメンタルだったものなのさ