土壁の葉 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある







 
 
    住宅街を抜けて畑の近く

    古い崩れかけの土壁に薄いブルーシート

    なぜかそれを乗り越えて

    壁を超えてきたのは

    葉の形から水辺の草だと思った

    その葉陰の土壁はしっとりと濡れて


    つい壁越しに向こう側を見て驚いた

    壁の向こうは小川

    一面に水草が繁茂していた

    こちら側は乾いた道

    なぜ乾いた道の方に伸びてきて葉を広げたのだろう

    
    理由は考えてもわからないけれど

    もしかして光を求めたかと思ったが

    壁の向こう側も光は十分に当たっている

    伸び広がって行きたいのか

    お前たち


    少なくとも土壁が乾ききって崩折れていないのは

    水草が導いてきた水の広がり



    ああ言葉もない

    理由もいらない

    ただ生きてあることは一人ではないと思った

    ただの土塊(つちくれ)のような壁と

    草の葉の深き緑の

    夏の日のデュエット

    ただそれだけでじゅうぶんだ