珈琲ミルク | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 昼下がりの
 街のカフェテラスで飲む珈琲
 何だか少しホロ苦い
 ちょっとあの頃の味がする

 お酒を飲めない年齢で
 それでも少し大人の恋ならば
 珈琲くらいしか酔うものはなく
 何処かで独り酔いしれていた

 良い子は早くお家に帰ろうね
 そう言われるたびに繰り返す
 エエでも僕のお家はカフェテラス
 他に帰れる場所がない

 そしたらお巡りさんが言うことは
 もうすぐ珈琲のように真っ黒な
 疲れた大人の夜が来る
 君ならミルクの朝がお似合いだ

 きっと僕の人生は
 あの愚かな日々から始まって
 ずっと一度も変わらずに
 とぼけた珈琲ミルクの味がする