涙日和(なみだびより) | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 海猫が何羽も空に大波模様の曲線を引き

 それから海が静かに涙を流した日

 少年は自分が生まれたと聞いていた

 そして皆は少年のとてつもなく青い目を

 海の涙と呼んでいた


 青々と広がった空のキャンバスに白い雲

 それから空が風に吹かれて涙を流した日

 少女は自分が生まれたと聞かされていた

 だから皆は少女の少し悲しげな灰色の目を

 空の涙と呼んでいた


 海の涙と

 空の涙が出会って恋した日

 世界はどんな天気になるだろう

 空の涙が海の涙と出会って結ばれて

 生まれたこどもはきっと

 星の涙と呼ばれる瞳を濡らして生きていく


 だから少し灰色混じりの水色の

 心を濡らして雨の降りしきる日は

 今でも涙日和と言うそうな