バスタブの湯の中で
世界の音を聞こうとする
何という静かな
無音の谷合い
世界などないかのように
光を落とせ
そして
身体を確かめてみる
この骨と筋肉は何のために
この皮膚は何を求めて
不意に空高く往く航空機の
くぐもった爆音
あの船の港はどこか
戦(いくさ)船
それとも旅する者たちの
遠い音
やがて消える
生きるということは
未知があるということ
何一つわからない未知が
新月の夜のように
誰とともに
誰のために
何一つ前置きすることのない
これからの時間
夜こそ明日の日
この身ひとつで占うように
在りて今
沈黙の音を聴く