車窓 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 過ぎていく 景色

 車窓の外に広がる水田を見る

 植えられた若き稲

 鏡のように空を映す水

 曇り空

 ときどき窓に打ち当たる雨

 緑濃い丘陵

 ただ物憂げに外を見る僕は

 自分の呼吸を

 過ぎていく光景と

 走っていく時間に預けている

 みどり 浅い緑

 草色の平野に点々と置かれた

 真っ白な小さなトラック

 働いている人は遠すぎて見えないけれど

 働いて人は幸せを植える

 見事に稔る日を願って働き続ける

 きっと年老いて腰が曲がるまで


 僕のこのいのち

 どこまで走って行くのだろう
 
 みどり 浅い緑の

 時間の中を