雨降りの日に | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 雨



 濡れないようにと気づかいながら

 小石さえ踏まずに歩いていたアスファルト

 それでも傘に落ちてくる雨音の一つひとつに

 透き通るような音符を聞かずにはいられなかった


 
 濡れてもいいとあなたが思うのは小径の端の

 そのメロディに小さく揺れる花とすれ違うとき



 いつかこの花のように灰色の中で鮮やかに

 芯まで濡れてみたいと

 そう思ったあなたの少し見上げた空から

 傘を逃れて一粒の雨が額にぽたりと落ちた



 雨降りの日のたった一つの四分休符