微睡(まどろみ) | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 目覚めているようで醒めていない夢
 やわらかい気怠い枕

 明るい光の中の半睡の惑星
 ここだけのうちに反響するぼんやりとした谺(こだま)
 身体が無性に温かい
 内側と外側の間に息をする皮膚

 誰かに委ねようか

 遠い鳥
 やわらかそうな風の音
 真実?

 さあ
 わからない

 在るのはただ自分の身体だけ

 もう閉じかける睡蓮のなめらかな花弁
 朝露はもう蒸発して
 太陽のそばにいってしまった

 理性は水飴のように溶け
 出来事は形を緩めて

 夢にも現(うつつ)にも

 「私」はまだ生まれない

 粘膜の時間