続・反・愛の文法 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 私を「あなた」と呼ばないで
 いや「君」とも呼んでほしくない

 私を名前で呼ばないで
 「あなた」も「君」も私の名前も
 私ではない

 名前を捨てて
 すべてを脱ぎ捨てて今ここにいる
 これだけの私なのだから

 名付ける必要もなく
 装飾のひとかけらさえ必要でなく

 ただこれだけの私なのだから

 すべての文を解体し
 すべての言葉を分解し
 ただひとつの音になる

 ただそれだけの私になるのだから

 呼ばれることも名乗る必要もない愛だけを
 私はそっと静かに受け入れる


 



                   *vouvoyer et tutoyer