五月
生温い風なのに
肌に快く感じられるのは何故だろう
気温に誘われてすっかり薄着になったせいか
かすかな手足の気怠さも
始まろうとする初夏への酔いのせいなのだと思えてくる
レースのカーテンをはためかせて吹き込んでくる
その風の揺らめきが明るいフロアリングに
初夏の葉影模様を幾重にも織っては覆す
鳩が庭の木に巣を作る
もう卵を産んだのかじっと座っている
父親になる予定の鳩がときたま餌を運んでくる
ハナミズキはどれものびのびと枝を広げ
五月の風のような花が数多の蝶の羽のように開く
梅の実は膨らんで匂い始める
芝のなかに伸びた雑草の見事な勢いの中を
アゲハやモンシロが揺れていく
明るいのに濃い緑の葉の中の紫の花
芝生に寝れば空を横ぎっていく鳥の影
膨れあがるように聞こえる潮騒
小湾を天馬のように一文字に横ぎる海鳥をずっと眺めていた
きっと今日の夕暮れに吹く風は
熱きもの燃え上がるものを運んでくるだろう
もう既に暖かさを超えた温度の身体にも
来たるべきものの息遣いがそこにある
生きていくものの身震いするように
まるで懐かしい友のように五月がやって来る