明かりを消した風呂の薄暗がりの
湯船の中で
少し疲れた筋肉が緩くなり
湯が遥か遠く海辺の方にまで広がっていく気がする
寒さが戻った夜の
静かだが既に春に膨らんだ闇の中を
さあさあと
降る雨の軽く柔らかな音
それからどこかの枝か軒から
何秒かおきに落ちてくる雨滴が
地面近くに広がった一枚の葉に落ちる
ぱたり
それもまた雨の音
僕の頭蓋骨を抜けて
脳髄を通り喉から肺腑に落ちる雨音は
ショパンよりは穏やかだ
それから
僕は濡れた外の闇になる
雨は雨粒なのか
それとも長い水の一本の垂線
このままその垂線に貫かれて
死んでもいい
そう何度か思っては考えなおす
ずっと生きていようと
この目に見えない垂線のなかで
尚も僕が生きているのは何故なのか知るまでは
不連続にぱたりと落ちる雨粒と
真っ直ぐにつながって落ちてくる雨の糸の音とを
僕はじっと闇の中で見比べるように聴く