草叢のナルシス | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある













 草叢に誰が植えたか水仙花

 愛に藻掻いたナルシスの悲しき生を忘れてか

 静かに春を告げていた

 

 ひとの言葉を繰り返しては捨てられた

 エコーも今は何処(いずこ)かに消え



 春の空気の底に黙して咲いた

 ナルシスの白き肌(はだえ)に

 光が触れて遠ざかる



 今そこにある季節の香りは

 酔うほどに悲しくなると言いたげに