その小径は家からずっと続いている
丘というべきか小山というべきか
鳥が啼き栗鼠が木を穿(うが)ち鼬鼠(いたち)が棲む
そこからは淡い色に和らいだ富士が
まるでキリマンジャロのように宙に浮かんで見える
ほぼ毎日のように小径は僕を呼んだ
僕が必ず呼応するわけではなかったが
冬の終わり間近に小径の脇の草むらに
咲いていた白い小さな名も知らぬ花を友にするようにと
雨が降り形のない流れができて風が凍て風が緩んで
小径は少し安心したように僕に言った
でも春がぱたぱたと止まらぬ足音で告げる頃
昼下がりの小径から花は消えていた
千切られた痕もなく踏みつけられたのでもないままに
それゆえに僕はいつまでもその白い小さな花を
探し続けるように運命づけられてしまったのだ
小径の緑薫る夏も枯れ葉温もる秋の日も
この冬もやがてくるだろうもう一つの春も
死にもしなければ枯れることもないあの花は
あの日つむじ風が掛けていった謎のマントを解く鍵を
僕がこの手にすることができる日を今も待っている
