冬の形 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 蛇が口を開いて何かを呑み込もうとするようにも見えなくはない
 引っ張られて切れそうな繊維がその印象を強くするけれど





 少し横から見れば
 蛇ほどの恐ろしさはなく
 食中植物のウツボカズラの乾いた姿のようにも見えた
 薄い皮膚のように透けて見える





 三叉になった姿は
 喧(かまびす)しく鳴いている幼鳥のようでもあり





 なんだか冬にふさわしい色だなと思う

 知ってるひとは知っているだろう
 これはあの可憐華麗な百合の花の「跡」なのだ

 花が落ちて残った
 種を包んでいた筒状の部分が乾き強く弾けて
 種子を飛ばした後なのだ
 その種は土に落ちて
 いつかまた百合の生き方を繰り返す
 
 野の冬の形

 それはこうして
 どこかに見えにくい春を含んだものなのだろう