雨有情 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 しとど降るというわけではない雨は悲しい

 スコールのように降る雨は
 乾燥した土の匂いさえ巻き上げて
 潤いが空気にとよめくようなのに

 降るか降らぬかわからぬほどの静けさで
 気づけば草も木の枝も濡れ
 雨滴がそこここに留まって光っている

 何が悲しいというわけではない
 来し方の苦も楽もみな悲となって降る気がする
 そして今また世界は悲しみに沈黙する

 さまざまな自らの感情と
 知りうる限りの人たちの感情すらもが
 雨のように僕のこころの庭木を濡らすようだ

 何度も言ったかもしれないが僕は
 雨が好きなのだが
 それはきっと雨が悲しいからなのかと今日は思う

 何の理由もありはしないのだけれど