山茶花の誓い | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある







 なんだか好きじゃない
 肉厚でぼってりとして
 くすんだような赤の花びらが
 山茶花(サザンカ)はいつもそう思って顔を曇らせていた

 けれど冬の寒い空気の中で咲くのだもの
 春の花のようにいつも潤って咲いてはいられない
 でもどうしてこんな赤なのだろうと
 冬空の下で咲く度に山茶花は思うのだった

 ある冬に暗い鉛色の空から
 白く冷たいものが舞い降りてきて
 山茶花の花の額も頬も唇も
 氷のような掌(てのひら)で包み込む

 なんて冷たいのだろうと震えたが
 通りかかった子どもが言った
 「雪の降る中で美しく輝きだすなんて
  なんと強くて綺麗な花なのだろう」

 それを聞いて山茶花は誓った
 雪の白と結ばれて輝ける唯一の花として
 私は自分の花びらを誇らしく思っては
 雪の日の子どもたちのために咲くだろう

 雪の日の子どもたちの頬と唇のように赤赤と
 それこそが冬の花 Camellia sasanqua の
 生きる意味なのだと 
 気がついた