僕が一頭の貘を飼っていたのだが
僕が貘は夢を見るのだろうかと気になって
貘にそのことを聞いたなら
じゃあ貘になった夢をみたらどうなのかと奨められ
あっという間に
僕の貘に僕がなって貘の僕
ただそれだけの夢を見た
僕は人の夢を食べてみたけれど
特に苦しいわけもなく
その夢で貘の僕が悪夢を見ることもない
貘が夢を食べる生き物であるならば
いい夢だって食べるはず
そう思って
幸せそうな寝顔の子どもの夢を覗いてみたけれど
なぜだか貘の僕には夢の中身が分からない
貘生活マニュアルを開いて見てみたら
食いしん坊の貘は自分の夢まで食べたので
以来自分のも人のも夢を見ることはないとある
なるほど貘は夢を見ることはないのかと
そうすると貘は
いい夢も悪い夢も区別できずに食べるのか
またつまらないことが気になって
貘生活マニュアルの数ページ先をめくったら
「いい夢と悪い夢の見分け方」
急いでそこを読もうとしたら
なぜだか貘になった夢が覚めてしまって
目の前で僕の貘が僕の夢をバクバク食べていた
「おいこら これからいいところだったのに」
そう言うと貘が笑って言ったのさ
「さあそれはどうかな
君が夢を見ない僕になって夢を見た
ということは僕も夢を見たことになり
夢をまた見ることができるようになった以上は
この夢がいい夢なのか違うのかは
僕だけの秘密にしておきたかったのさ
それに貘生活マニュアルのあのページ
食べる夢の見分け方ではなくて
貘生活の要らなくなっていた自分篇
いい夢を選んで見る方法が書かれてた
だから人間には見せないほうがいいと思ってね」
なんだか勝手な話だと思ったが
まあ夢であれ貘になれたのはよかったと思うことにした
結局
夢って何なんだろうね
まあいいか悪いか分からない
それ自体何なのかも分からない
そういうことが夢なんだろうと考えて
そう貘に言ってやろうとしたら
やっとほんとに目が覚めた
