snow morning | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 夜からの雪がしばらく止んだ
 この辺りとしては積もったなと思う

 雪国の人たちにとっては辛いものなのだろう
 そうでない人にとってはついつい楽しくなる

 けれどなぜ雪を美しいと感じるのだろうか

 白

 その一文字に尽きるとしても
 雪はただの白ではない
 水であり氷であり
 さまざまな色を持つ物たちを包み込む

 包み込みながら
 それらの物たちの色を浮き上がらせる
 白は色ではなくて
 すべての色に対するアンチテーゼなのだ
 その白のおかげで
 色ある物たちは更に新しい色と成る

 朝の光が次第に照らすようになると
 雪自体が輝き始める
 水に戻る前にその運命を受け容れて笑うように
 雪でない物たちの色を愛して
 少しだけ奪って耀くのだと
 僕は思うことにしている

 その交歓
 雪を美しく思わせるのは
 そういう静かなやりとりのせいなのかもしれないと


 何だか他の場所の雪を眺めたくなっていた