愛したと? | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 愛したと?
 
 愛ほどみんなが自分勝手な意味で使う言葉はないだろう
 
 いや「愛」だけじゃない
 みんなは
 すべての言葉を自分勝手な意味で使うものなのだ
 
 ただそれが「愛」のとき
 その食い違いが際立って嫌でも気づいてしまうのだ
 
 だから人はその食い違いに気づかぬ振りをする
 同じ意味で言っているのだと思おうとする
 
 でも
 と深刻になって僕は立ち止まる
 
 自分勝手な言葉の意味
 それこそ愛と程遠いことではないのかと
 ましてやそれに気づかない振りをすることは
 
 ならば 

 愛するためには
 自分勝手に染められた言葉を捨ててしまえばいいのかも
 
 けれど言葉を捨てたなら
 何を頼りにすべきだろう 
 
 ただ黙々とその人と生きるのみ
 他には何も必要ないと
 
 愛の言葉の一つだに要らぬとあなたは誓えるか