水辺の秋・夕暮れ篇(3) | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 いつの間にか湿原に住み着いた生き物のように
 僕は歩きまわる

 世界は何故これほどまでに
 悲しいまでに美しいのだろうかと



 黄色い小さな葉叢の息づいている




 水面に映そうと思って映すのではないのに
 色は映り水中の枝となる






 ああ底知れぬ静寂の水に潜む枝たちよ







 小さきもの
 落ちてなお耀くものたちよ






 橙色の葉のまにまに熟す赤い実も
 ただ鮮やかに笑っていた




  繁れるものよ






 清貧を嘉しとするものよ





 落ちかけて今しばらくの時を枝に在って待つものも




 散り敷いて静かに土に帰るときを待つものも




 夕まぐれ
 既に時を知るかのように立ち尽くす






 枯れ枝にまだ寄り添って赤き葉の
 なぜにかくまで美しき





 水辺に在るは








 水辺に在るは



 水を愛する植物たちのまにまに在ることだ

 風のように繊細な茎たちの姿に胸打たれ

 色づきながら過ぎていく生のさまざまな形

 深々と語り歌い出す静かな姿とともに居て

 その言葉と歌を時を忘れ聴いて在ることだ













                次回最終回は今夜にも・・・・