一枚の葉 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 
 そこに落ちていた一枚の

 色鮮やかに色づいた葉は

 ただ一枚ぼっちの葉なのではない


 その葉の生まれ育った枝と木を

 その木の一生とその木の植物種

 それまでのすべての生物の系統を

 この星の酸素の歴史と

 この星の誕生を

 銀河の永き時間の経過

 大宇宙の耀かしき生成を

 風に舞うほど軽い一枚で物語る

 すべての命の

 生きた象(かたど)り

 生きた化石として今そこに在る



 一片の言葉は決して

 その深い時間の井戸のような一枚にはかなわない

 叶う必要もない

 けれど言葉にもできることがある



 それはこの一枚の葉の中にある

 ひたすらに続いてきた歴史を映すこと

 そうやって

 この一枚の新しい世界をまたひとつ造ること



 言葉はいのちを映すものであり

 命に新しい世界を与えなおすことなのだ