詩を書く者は | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 そして詩のもっとも重要な特質は
 何一つ結果を期待せず
 從って伝わることを期待せぬ点だ
 それはもはや投げ出されたものであり
 それによって得るものは何もない
 
 
 ただ耀(かがや)くようにと作られて
 後はそれを見る読む聞く者が
 如何ようにも感じとればよい
 悲しみが癒えようと喜びがいや増そうと
 愛が震え戦いが鼓舞されようと
 
 
 そのどのような受け止めようも
 書いた者は歓び甘んじて受け入れるだろう
 よほど愚かなものでない限り
 その受け止められ方をおのが思いと比べては
 また愉しみとするだろう
 
 
 それはひとつの交歓の形
 木と語らうのと似たようなもの
 覗きこんだ草の露に映る世界を見たように
 風になる羽音に命を聞くように
 書く者は返りくる光に憧れて書くものだ