甘い時計 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある

 
 
 時計の針が林檎の中で回っている

 次第に切り取られる果肉のあいだから

 甘酸っぱい果汁が滴(したた)って

 薄黄色い明日が香り始めた




 あなたの指がさらさらと揺れて

 やさしい蜜蜂が∞(むげんだい)の字を書いて飛んだ

 明るい秋の日の頂点が

 この時間の中ほどにある幸せを歌っている




 私たちの日々が連れてきた音楽

 リフレインする音符の甘いリズム

 香る林檎の

 甘酸っぱい自由が魂を満たしている気がする