瞳のなかで重なって | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 
 
 あなたの大きな瞳は
 私を愛してくれている証拠

 遠い時の彼方で微笑んだ人たちの
 幼い私をとりかこむ瞳の輪
 その瞳の中に私はいつも住んでいて
 瞳の中の私の瞳も円く大きく膨らんで
 ずっとあなたを見つめていくだろう

 サンテックスが言うように
 愛は見つめ合うことでなく
 並んで同じものを見ることだとしても
 私たちの瞳は合わさって
 ふたりが見るものたちに
 もっと大きな瞳を配るだろう

 三面鏡の中で繰り返す
 ふたりの瞳の光の連鎖が
 ただの反射でなくなった日に
 瞳は瞳のなかで重なって
 末永い時間へと育つのだ










             人は素晴らしいもの愛するものを見ると
             瞳が大きくなるのだと何処かで読んだ
             ならば相互に繰り返していくのだろうかと

             だから大きな瞳で見られたければ
             あなたが相手を大きな瞳で見ればよい
             そんなことが書いてあった本だった