過ぎていく秋の時間 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 時が過ぎる

 喜びに弾むときも

 悲しみに沈みときも

 速く往けと望むときも

 じりじりと過ぎてゆく時間に止まれと願うときもある

 けれど

 ひとの時間も虫の時間も花の草の時間も

 止まることはない

 その速さはそれぞれに

 疾きものも

 緩やかなるものも


 願わくは

 猛り来る時の嵐より

 この小さき者たちを守り給え

 




              Colchicum イヌサフラン
              球根のまま皿に載せておいても咲く不思議な花だが
              土におけば球根は豊かに栄養を得て増えていく
              朝の光に背を伸ばす姿が美しい
              このコルチカムも僕の部屋の皿の上で咲いていたものだった



              水辺の草が橋脚の側で翳を作る午後




              午後の木漏れ日の中のジョロウグモはじっとしていた



              夕暮れの高い枝に巣を構えていた夫婦のジョロウグモ
              ちょっと見には大きな網の家は僕の目には見えなかった




              昼下がり風に煽られていた尾花はまだ銀色の穂が光る




              夜の尾花は月の光の中あるかなきかにそっと揺れていた




 烈しき時

 穏やかなる時

 すべてが同じ時であることが僕にはいつも信じられない