滴 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある




  秋の葉からまっすぐに落ちてくる水滴の
  砕けずにすっと土に吸い込まれて消えていく

  たったそれだけの夢を見た

  けれど
  その朝に見た百日紅(さるすべり)
  撒き散らされた紅い滴(しずく)のように咲いていた

  静けさが
  光としてひらけくる秋

  ひと滴の夢に映った百日紅(ひゃくにちこう)