雲塊の鳥 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


  雲よ

  地上からは柔らかな綿飴にさえ見えるのに

  そこにあっては

  空にあっては鬱勃たる力を孕んだ

  激しい力だ



  咆哮しながら飛び広がっていく軍船

  陽光に貫かれて虹になる氷滴の音もなき拡散

  絶えず僕たちの舟を脅かす

  無限に反復する圧力

  
















  
  まるで霧に巻かれた山嶺の

  鬼火の底から吹き上がる竜巻のように















  闇は一種の光なのだ

  いや

  光が一種の闇なのか





  そのとき遥か遠くに黒点の如き鳥影を見た

  光のような闇の

  あるいは闇のような光の縁を無音飛行する

  確乎たる翼点



  あの悠々たる飛び方は大きな翼

  光と闇の淵に吸い込まれることなく
  














  雲よ

  鴻(おおとり)の揺籃

  空の海よ