雲よ
地上からは柔らかな綿飴にさえ見えるのに
そこにあっては
空にあっては鬱勃たる力を孕んだ
激しい力だ
咆哮しながら飛び広がっていく軍船
陽光に貫かれて虹になる氷滴の音もなき拡散
絶えず僕たちの舟を脅かす
無限に反復する圧力




まるで霧に巻かれた山嶺の
鬼火の底から吹き上がる竜巻のように


闇は一種の光なのだ
いや
光が一種の闇なのか
そのとき遥か遠くに黒点の如き鳥影を見た
光のような闇の
あるいは闇のような光の縁を無音飛行する
確乎たる翼点
あの悠々たる飛び方は大きな翼
光と闇の淵に吸い込まれることなく



雲よ
鴻(おおとり)の揺籃
空の海よ