遠い海 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある










   セールの赤が海に解け出して
   時の名残を彩っていた


   光っていたのは波だったのか
   それとも
   波に融けこんでしまった陽の光

 
   輝いていたのは誰だったのか
   夕風に乗って滑りゆく青いサアファが
   それとも
   落ちかかる日を忘れてしまった子らたちか


   それとも
   それとも
   巡り逢う顔の一つ一つに魅せられて
   すべての顔が夕闇に
   見えなくなるまで
   そこにいて

   そこから決して離れられなかった
   僕たちか