五月頌 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 さんざめく五月の風ふところに
 膨らんで揺れる金魚草
 スナップドラゴンの名に恥じず

 鯉の幟(のぼり)と吹流し
 遥かに高く飛び越して
 ひとり風の先導をした紙鳶(いかのぼり)

 この碧空(へきくう)を飛び回り
 死を賭して戦っている者たちの
 正午(まひる)に歌を贈らばや

 裸で風に酔うごとく
 小さきいのちの果てしなく
 夏の兆しと在るように





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